EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2013.05.02
今後のcandidate listの収載されるSVHCの計画については、2013年3月1日付けコラムで紹介しました。そのコラムでは、すでにSVHC提案のための附属書XVが提出された物質について紹介しましたが、これらのすべての物質についてcandidate listに収載する提案がECHAから発表され、2013年3月4日から4月18日の間まで意見募集が行われていました。
再掲になりますがこれらの物質を表に示します。これらがcandidate listに収載されますと、SVHCの合計は148物質群になります。
# | 物質名 | EC番号 | CAS番号 | 提案国 | 特性 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 2-(3,5-ジ-tert-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(UV-328) | 247-384-8 | 25973-55-1 | ドイツ | PBT、vPvB |
2 | 2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-sec-ブチル-4-tert-ブチルフェノール(UV-350) | 253-037-1 | 36437-37-3 | ドイツ | vPvB |
3 | 2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロ-2-ベンゾトリアゾリル)フェノール(UV-327) | 223-383-8 | 3864-99-1 | ドイツ | vPvB |
4 | ペンタデカフルオロオクタン酸アンモニウム(APFO) | 223-320-4 | 3825-26-1 | ドイツ | 生殖毒性、 PBT |
5 | フタル酸ジ-n-ペンチル | 205-017-9 | 131-18-0 | ポーランド | 生殖毒性 |
6 | カドミウム | 231-152-8 | 7440-43-9 | スウェーデン | 発がん性、57条(f)に該当 |
7 | 2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert- ブチルフェノール(UV-320) | 223-346-6 | 3846-71-7 | ドイツ | PBT、vPvB |
8 | ペンタデカフルオロオクタン酸(PFOA) | 206-397-9 | 335-67-1 | ドイツ | 生殖毒性、PBT |
9 | 酸化カドミウム | 215-146-2 | 1306-19-0 | スウェーデン | 発がん性、57条(f)に該当 |
10 | 4-ノニルフェノールエトキシレート 〔ノニル基は、炭素数9の直鎖および分岐のアルキルのすべての異性体の単独物、および混合物(UVCB)、エトキシレートの付加数は、単一のものからUVCB、ポリマー等すべてのものを含む〕 |
- | - | ドイツ | ED |
表の#1、2、3、7は紫外線吸収剤として用いられているもので、以下の基本骨格構造を持つベンゾチアゾール置換フェノール化合物類です。これらの物質の有害性は基本的に類似していることから、附属書XVにおける提案説明の部分はほぼ同じ内容となっています。
今回の候補には、#6のカドミウム金属、および#9の酸化カドミウムがあります。カドミウムやカドミウム化合物については、すでに附属書XVIIでポリマーの着色剤に0.01%以上の使用が禁止されています。この禁止については委員会規則(EU)494/2011で従来の対象ポリマーが拡大されていました。国際カドミウム協会(International Cadmium Association :ICdA)から2011年8月に、拡大された対象ポリマーの規制を取り消す申請が欧州裁判所に提起されています1)。一方、欧州委員会からの要請によりECHAは、対象ポリマーをすべてに拡大する妥当性を検証するために、2013年1月14日から2月11日まで対象ポリマーの拡大の影響や代替物質等に関する情報を提供するように求めていました2)。
他方、RoHS指令では、カドミウムとカドミウム化合物のいくつかの用途での除外項目があります。これらの除外用途については、REACH規則のSVHCの情報提供等の義務は課せられると考えるべきと思います。
なお、表の「特性」の有害性の項目については、先のコラムの項目の一部をECHAの発表情報に従い修正しています。
また、2013年4月18日に第3回目の附属書XIVに収載された認可対象物質が公布されました3)。以下の表に示します。整理番号(#)は、これまでの附属書XIVに収載されている物質からの通し番号です。今回の収載で合計22物質が認可対象になりました。
この提案に対する意見募集は、2011年6月15日から9月14日まで行われ、2012年12月18日にWTOへTBT通告が行われていました。提案の意見募集から公布まで2年弱の時間を要しています。当初の提案では、5種のコバルト(II)化合物が含まれていましたが、REACH規則附属書XVIIでの制限を検討し、認可について別途審議することとして、附属書XIVへの収載が見送られています(詳細は2012年10月12日付けコラムを参照下さい)。
今回、特徴的なことは六価クロム化合物が一括して収載されたことです。六価クロム化合物についてはこれまでも規制されていましたが、さらに厳しく規制を強化しようとしていることが覗えます。
# | 物質名 | 認可申請期限日 | 日没日 |
---|---|---|---|
15 | トリクロロエチレン | 2014.10.21 | 2016.4.21 |
16 | 三酸化クロム | 2016.3.21 | 2017.9.21 |
17 | 三酸化クロムとそれらのオリゴマーから生成する酸: このグループには下記が含まれる | ||
クロム酸 | |||
重クロム酸> | |||
クロム酸と重クロム酸のオリゴマー | |||
18 | 重クロム酸ナトリウム | ||
19 | 重クロム酸カリウム | ||
20 | 重クロム酸アンモニウム | ||
21 | クロム酸カリウム | ||
22 | クロム酸ナトリウム |
1)http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:C:2011:298:0027:01:EN:HTML
2)http://echa.europa.eu/view-article/-/journal_content/d0dac9de-de4b-4d18-99c4-1260bb2a63dd
3)http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2013:108:0001:0005:EN:PDF
(林 譲)