EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2013.06.28
韓国には「品質管理および工業製品安全法(以下、工安法)」により工業製品の有害化学物質管理が行われています。5章41条の構成です。
工安法の目的は、第1条で「この法律は、企業・公共機関・団体などの品質管理の助成・支援に関する事項や工業製品の安全管理に関する事項を定めることにより、企業・公共機関・団体などの品質競争力を強化し、消費者の利益と安全を図ることを目的とする」としています。
工安法では、製品対象を4つの区分で規制をしています。
(1)安全認証対象工業製品
構造・材質・使用方法などにより、消費者の生命・身体への影響、財産上の被害や自然環境の破壊のおそれが大きいと認められる工業製品として知識経済部令(施行規則別表1)で定めるもので、規制内容は第3章第2節に示されています。
施行規則別表1の内容(一部)は以下のようです。
分野1:繊維
つけまつげ(接着剤を含む)
分野2:化学
自動車用再生タイヤ(タイヤのゴムを含む)
分野3:金属
家庭用圧力鍋と低圧鍋
携帯草刈機
分野4:生活用品
ガスライター
水遊び用具
子供遊具
自動車用チャイルドシート
分野5:機械
エレベーター主要部品(調速機、非常停止装置、衝撃吸収材、上昇スピード防止装置用のブレーキ、乗り場ドアロック)
(2)自主安全確認対象工業製品
工業製品の構造・材質と使用方法などにより消費者の身体に危害をもたらす恐れがある工業製品で、製品検査でその危害を防止することができると認められる工業製品として知識経済部令(施行規則別表2)で定めるもので、規制内容は第3章第3節に示されています。
幅広い製品が指定されています。
施行規則別表2の内容(一部)は以下のようです。
分野1:繊維
安全ロープ
スポーツ用救命胴衣
子供繊維製品
分野2:化学
バッテリー
不凍液
自動車用ブレーキ液
自動車用安全ガラス
自動車用フロント窓ガラス洗浄液
自動車用タイヤ
幼児保護用品
分野3:金属
裁断機
分野4:生活用品
高齢者用歩行車
ショッピングカート
子供アクセサリー
分野5:機械
高齢者用歩行補助車
高齢者の歩行車
デジタルドアロック
ローラースケート
ショッピングカート
スノーボード
スケートボード
子供用二段ベッド
子供用アクセサリー
おもちゃ
ベビー三輪車
ベビーキャリア
自転車
キックボード
AC電源が51ボルト以上1,000ボルト以下で使用される電気機器
紙おむつ
学用品(クレヨンなど)
基準は1から47までありますが内容確認はできていません。
(3)安全・品質表示対象工業製品
消費者の取扱い・使用・運搬などの過程で事故の発生や危害を受ける可能性のある工業製品及び消費者が成分・性能・規格などを識別することが困難な工業製品としての知識経済部令(施行規則別表3)で定めるもので、規制内容は第3章第4節に示されています。
施行規則別表3の内容(一部)は以下のようです。
分野1:繊維
家庭用繊維製品(接触性繊維を含む)
分野2:化学
レザー製品
フィルム(食品用器具および容器・パッケージは除く)
除湿剤
化粧石鹸
塩化ビニルホース
分野3:機械
水槽
分野4:生活用品
家具
家庭用用品
高齢者向け靴保冷容器(食品用器具及び容器・包装を除く)
ベッドのマットレス
傘および日傘
(4) 子供保護包装対象工業製品
対象製品は、消費者が飲んだり吸入すると中毒等が懸念される工業製品のうち、子供保護包装対象となるもので、知識経済部令(施行規則別表4)で定めるものです。
子供保護包装は「大人が開封することは難しくはないが、5歳未満の子供が一定の時間内に内容物を取り出しにくく設計・設計されたパッケージ(容器を含む)」とされています。
規制内容は第3章第5節に示されています。
施行規則別表4の内容(一部)は以下のようです。
分野:化学
光沢剤
芳香剤
洗濯剤
自動車用フロント窓ガラス洗浄液
接着剤
(5)その他の製品(第28条)
安全認証対象工業製品以外の工業製品として市場に流通されている工業製品の中で、次の各号のいずれかに該当すると判断される場合には、その危害性の有無を確認するために、大統領令が定めるところにより、当該工業製品の安全性調査が行われます。
安全認証対象工業製品の製造を業とする者または外国で製造し、大韓民国に輸出しようとする者は、知識経済部令が定めるところによって工業製品のモデル(知識経済部令が定める独自の名称を付与した製品の種類をいう)で安全認証機関から安全性の認証を受けなければならないとされています(第14条)。
「安全認証対象工業製品」とは、「構造・材質と使用方法などにより消費者の生命・身体のために、財産上の被害や自然環境の破壊のおそれが大きいと認められる工業製品中の安全認証を通じて、そのための対策することができると認められる工業製品として知識経済部令で定めるものをいう」です。
第14条では、次の義務も定めています。
(1)安全認証機関による安全認証を受けた安全な認証対象工業製品の安全性が維持されているかを確認するために産業通商経済部令で定める方法および手順に従って、安全認証対象工業製品の製造業者の安全認証対象工業製品や工場に対して2年に1回定期検査をすることができる。
(2)安全認証対象工業製品の製造業者は安全認証を受けた後、製造されている安全認証対象工業製品に対する産業通商経済部令で定めるところにより、安全性が維持されているかの自己診断テストをし、その記録を作成・保管しなければならない。
(3)安全認証機関は、産業通商経済部令で定めるところにより、安全認証対象工業製品の安全性に関する試験・検査をする国内外の機関との安全認証対象工業製品の製品検査や工場審査の結果を相互に認める契約を締結することができる。
安全認証対象工業製品の製造業者または輸入業者は、安全認証の表示の義務(第16条)や輸入業者および販売業者は、安全認証表示のない安全認証対象工業製品の販売、販売を目的に輸入・陳列や保管の禁止(第17条)があります。
第19条から第21条に自主安全確認対象工業製品の義務が示されています。
(1)自主安全確認対象工業製品の製造業者および輸入業者は、知識経済部令が定めるところにより、自主安全確認対象工業製品のモデルごとに、指定された試験・検査機関から安全性の試験・検査を受け、当該工業製品は知識経済部長官が定めた安全基準に適合ことを自分で確認(自主安全確認)した後、これを知識経済部長官に申告しなければなりません。
(2)研究・開発や輸出を目的に製造又は輸入する場合などは届出の免除、試験・検査機関の安全性試験・検査の全部または一部が免除されます。
(3)自主安全確認対象工業製品の製造業者および輸入業者は知識経済部長官に申告した自主安全確認対象工産品は自主安全確認表示をしなくてはなりません。
(4)自主安全確認対象工業製品の製造業者・輸入業者・販売業者と経営者は自主安全確認対象工産品の自主安全確認表示を任意に変更または削除してはなりません。
(5)自主安全確認対象工業製品の製造業者・輸入業者や販売業者は、自主安全確認表示がない自主安全確認対象工産品の販売や販売を目的に輸入・陳列や保管が禁止されます。
自主安全確認表示(施行規則別表9)
第22条に安全性と品質に関する表示義務が定められています。
(1)安全・品質表示対象工業製品の製造業者および輸入業者は、安全・品質表示対象工業製品の安全・品質表示基準に基づいて当該工業製品の安全性と品質に関する表示をしなくてはなりまません。
(2)安全・品質表示対象工業製品の製造業者および輸入業者は、安全・品質表示をしていない安全・品質表示対象工業製品を販売が禁止されます。
安全性と品質に関する表示は施行規則別表10にありますが、別表9と同じです。
この基準は、安全認証対象工業製品、自主安全確認対象工業製品及び安全・品質表示対象工業製品の子供用製品に適用されます。この基準で規定していない有害物質は、個々の安全基準に従うことになりますが、子供に届くことができない製品の構成部分には適用されません。
「子供のための工業製品」とは、14歳未満の子供が主に使用される工業製品です。
子供のための工業製品に含有される有害物質の安全要件は次のとおりです。
有害物質 | 許容値 | 備考 | |
---|---|---|---|
鉛 | 300mg/kg以下 | ペイントや表面コーティングの場合は90 mg/ kg以下 | |
カドミウム | 75mg/kg以下 | ||
ニッケル | 溶出量 0.5mg/cm2/week以下 | 皮膚に直接接触する金属製品に適用する。 おもちゃ、アクセサリー、メガネフレーム、サングラス、衣類などに使用された金属製品 |
|
フタル酸可塑剤 | DEHP | 総含有量 0.1%以下 | 合成樹脂材料で構成される製品に適用する。 ただし、DINP、DIDP、DNOPの場合、子供が口に入れて使用する目的で製作された工業製品(歯固め、おしゃぶり、ガラガラなど)に適用する |
DBP | |||
BBP | |||
DINP | 総含有量 0.1%以下 | ||
DIDP | |||
DNOP |
工安法の目的(第1条)で「品質管理の助成・支援」「品質競争力を強化」を掲げています。
要求される「品質管理」は第2条の用語の定義からISO9001のシステムの運用を示唆しています。
(1)品質管理:企業・公共機関・団体等(以下、企業等)は、顧客が満足できる品質目標を設定し、これを達成するために体系的に品質を設計・管理・改善する経営活動をいう。
(2)品質マネジメントシステム:企業などが品質管理を実現するのに適合するように、人的物的資源を活用して構築したシステム(大統領令で定める産業部門別の専門の品質管理システムを含む)
(3)国際基準:国際標準化機構(ISO)が品質マネジメントシステムについて定めた国際規格をいう。
品質マネジメントシステムを認証する機関の認定は第7条による知識経済部で行います。
2013年3月23日の改正で、「産業通商部長官は、企業などの品質管理を効率的に達成するために品質マネジメントに関する次項の総合施策を5年ごとに策定実施なければならない」としています。
工業製品は、設計・試作時の品質を量産時も維持するための仕組みが要求されます。
本コラムはあくまでも法規制の意訳ですので、法規制の解釈は必ず原文をご参照ください。
(松浦 徹也)