EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2015.05.29
今回は、最近の制限物質やcandidate list収載物質(SVHC)のRegistry of Intentionsの動きについて紹介します。
2015年5月24日時点での制限のRegistry of Intentionsは表1のようになっています。
# | 物質名 | CAS# | 制限の範囲 | 提案書提出 予定日 |
---|---|---|---|---|
1 | フタル酸ジイソブチル(DIBP), フタル酸ジブチル(DBP), フタル酸ベンジルブチル(BBP), フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP) |
84-69-5 84-74-2 85-68-7 117-81-7 |
成形品中の4種のフタル酸エステル類の第69条(2)の下での制限。評価結果に応じて、制限の範囲は広範囲か一般市民への暴露が大きい成形品あるいは成形品のグループを特定。 | 2016年1月8日 |
2 | (3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ)シラントリオールおよびモノ、ジ、あるいは トリ‐O‐(アルキル)誘導体 | (185911-29-9) - |
一般市民用の噴霧剤中にフッ素化シランと1種以上の有機溶剤の組み合わせ使用の制限。 | 2015年7月17日 |
#1はECHAから、#2はデンマークから制限の提案書が提出されることになっています。
#1のフタル酸エステル類につきましては、2011年にデンマークから制限の提案が出されていましたが、昨年2014年8月に欧州委員会の「4種のフタル酸エステル類の制限手続きの最終化に関する報告」が官報公示され、制限提案は採択されないことになりました1)。
ただし、この報告では、附属書XIVに記載されているこれら4種のフタル酸エステル類の日没日(2015年2月21日)以降に、REACH規則に従って(注)、成形品中のこれらのフタル酸エステル類の使用が人間の健康や環境のリスクが適切に制御されていないかを検討することがECHAの義務にあることを指摘しています。
上に示したRegistry of Intentionsの4種フタル酸エステルの制限提案は、上述のREACH規則の規定に基づいて、欧州委員会がECHAに要請したことによるものです。
注:REACH規則(環境省仮訳より)
第69条 提案の作成
1.物質そのもの、調剤又は成形品に含まれる物質の製造、上市又は使用がもたらす人の健康又は環境へのリスクが十分に管理されておらず、対処される必要があると欧州委員会が考える場合には、欧州委員会は、附属書XV の要件に沿った一式文書を作成するよう、化学物質庁(ECHA)に対して要求しなければならない。
2.化学物質庁は、附属書XIVに列記する物質について、第58条(1)(c)(i)に記す日(日没日)以降に、その物質の成形品への使用が、十分に管理されていない人の健康又は環境へのリスクをもたらすか否かを検討しなければならない。そのリスクが適切に管理されていないと考える場合には、ECHAは、附属書XV の要件に沿った一式文書を作成しなければならない。
従い、今回のRegistry of Intentionsでの4種のフタル酸エステルの制限がどのようになるかは、ECHAの市場の状況、成形品の含有量や成形品からの移行量、バイオモニタによる人体への負荷等の評価結果によることになります。
なお、REACH規則では加盟国はEUレベルでの決定と異なった国内法の継続や新設はできないことになっています。そのため、デンマークが2015年12月1日施行としていた4種のフタル酸エステルの制限の国内法は、2014年9月15日に撤回されています2)。
2015年5月24日時点で、SVHCについて新たに提案の意図があると届出されている物質を表2に示します。
# | 物質名 | CAS# | 提案書提出 予定日 |
提案理由 |
---|---|---|---|---|
1 | フタル酸ジシクロヘキシル | 84-61-7 | 2015年8月3日 | 内部かく乱物質 |
2 | ヘキサメチレンジアクリレート (ヘキサン‐1,6ジアクリレート) |
13048-33-4 | 2015年8月3日 | 感作性物質 |
3 | ヘプタデカフルオロノナン酸(C8F17COOH) ヘプタデカフルオロノナン酸ナトリウム ヘプタデカフルオロノナン酸アンモニウム |
375-95-1 21049-39-8 4149-60-4 |
2015年8月3日 | PBT |
これらの物質は、いずれもスウェーデンからの提案です。
#1は、これまでにSVHCとして特定されているフタル酸エステル化合物類に含まれていないために、提案されているものと考えます。
#2のアクリル酸エステルについては、提案の理由が感作性物質となっています。感作性が懸念の理由として提案されたのは初めてです。感作性としては、皮膚感作性と呼吸器感作性がありますが、感作性物質はアレルギーの原因につながります。今後も感作性物質の提案が増えてくるのではないかと思います。
パーフルオロアルキルカンボン酸の中では、パーフロロオクタン酸やそのアンモニウム塩がすでにcandidate listに収載されていますが、#3はパーフロロオクタン酸より炭素数が1つ多いパーフロロ化合物です。今回は、そのナトリウムおよびアンモニウム塩も一緒に提案される予定です。
1)/well/reach/column/140919.html
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:52014XC0809(01)&from=EN
2)/well/reach/column/130712.html
/well/reach/column/130802.html
http://mst.dk/service/nyheder/nyhedsarkiv/2014/sep/miljoestyrelsen-ophaever-ftalatbekendtgoerelsen/
(林 譲)