EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2015.07.24
ECHAからEU委員会に提出された附属書XIVに収載される認可対象物質の第6次勧告案が、2015年7月2日に公表されました1)。
第6次の草案については、2014年9月1日から2014年11月30日まで意見募集が行われていました。この草案では22物質が提案されていましたが、公表された勧告案では15物質となっています。下記の鉛含有化合物7物質については将来再度検討するということで、今回の勧告案には入っていません。
# | 物質名 | EC No. |
---|---|---|
1 | 塩基性酢酸鉛 | 257-175-3 |
2 | 三塩基性硫酸鉛 | 235-380-9 |
3 | 四酸化鉛(オレンジ鉛) | 215-235-6 |
4 | パイロクロア、アンチモン鉛イエロー(ピグメントイエロー41) | 232-382-1 |
5 | 四塩基性硫酸鉛 | 235-067-7 |
6 | 酸化鉛 | 215-267-0 |
7 | ケイ酸鉛 | 234-363-3 |
表2に勧告案を示します。日没日は載せていませんが、REACH規則の規定通り、認可申請期限日から18カ月後です。意見募集中に寄せられた認可申請に対する除外用途等の要望については、今回の勧告案には採択されていません。
# | 物質名 | EC No. | SVHCの性質 | 認可申請期限 | 主な用途 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1-ブロモプロパン | 203-445-0 | 生殖毒性(1B) | 収載公布日後 18カ月 |
蒸気脱脂、表面洗浄用溶剤 |
2 | フタル酸ジイソペンチル | 210-088-4 | 生殖毒性(1B) | 収載公布日後18カ月 | 可塑剤 |
3 | 1,2-ベンゼンジカルボン酸、炭素数7の分岐炭化水素を主成分とする炭素数6~8のフタル酸エステル類 | 276-158-1 | 生殖毒性(1B) | 収載公布日後18カ月 | 可塑剤 |
4 | 1,2-ベンゼンジカルボン酸、炭素数7~11の分岐および直鎖アルキルエステル類 | 271-084-6 | 生殖毒性(1B) | 収載公布日後18カ月 | 可塑剤 |
5 | 1,2-ベンゼンジカルボン酸ジ-ペンチルエステル、分岐および直鎖 | 284-032-2 | 生殖毒性(1B) | 収載公布日後18カ月 | 可塑剤 |
6 | フタル酸 ビス(2-メトキシエチル) | 204-212-6 | 生殖毒性(1B) | 収載公布日後18カ月 | 可塑剤 |
7 | フタル酸ジペンチル(DPP) | 205-017-9 | 生殖毒性(1B) | 収載公布日後18カ月 | 可塑剤 |
8 | フタル酸n-ペンチル-イソペンチル | - | 生殖毒性(1B) | 収載公布日後18カ月 | 可塑剤 |
9 | アントラセンオイル | 292-602-7 | 発がん性(1B) PBT、vPvB |
収載公布日後21カ月 | コーティング、塗料撥水材、シーラント |
10 | コールタールピッチ、高温留分 | 266-028-2 | 発がん性(1B) PBT、vPvB |
収載公布日後21カ月 | コーティング、塗料、接着剤およびシーラントでの腐食防止剤 |
11 | 4-ノニルフェノールエトキシレート〔ノニル基は、炭素数9の直鎖および分岐のアルキルの全ての異性体の単独物、および、混合物(UVCB)、エトキシレートの付加数は、単一のものからUVCB,ポリマー等全てのものを含む〕 | - | 環境への有害性 (57条f) |
収載公布日後24カ月 | 採鉱での浮遊材、塗料および乳化重合に使用 |
12 | ホウ酸 | 233-139-2, 234-343-4 |
生殖毒性(1B) | 収載公布日後27カ月 | セルロース断熱材、冶金、接着剤、建築材料、塗料、洗剤、耐火物、肥料、原子力発電所での使用。 |
13 | 四ホウ酸二ナトリウム無水物 | 215-540-4 | 生殖毒性(1B) | 収載公布日後27カ月 | セルロース断熱材、冶金、接着剤、建築材料、塗料、洗剤、耐火物、肥料、原子力発電所での使用。 |
14 | 三酸化二ホウ素、酸化ホウ素 | 215-125-8 | 生殖毒性(1B) | 収載公布日後27カ月 | セルロース断熱材、冶金、接着剤、建築材料、塗料、洗剤、耐火物、肥料、原子力発電所での使用。 |
15 | 四ホウ酸二ナトリウム水和物 | 235-541-3 | 生殖毒性(1B) | 収載公布日後27カ月 | セルロース断熱材、冶金、接着剤、建築材料、塗料、洗剤、耐火物、肥料、原子力発電所での使用。 |
今回の勧告案で、特に注意したいのは、#2から#8までのフタル酸エステル7物質が認可対象物質として勧告されていることです。表3に示しますフタル酸エステル類は、認可対象物質として附属書XIVされ、既に日没日が過ぎています。今回の7物質が附属書XIVに収載されますと、認可対象となったフタル酸エステル化合物類は11物質となります。
附属書XIV収載# | 物質名 | 日没日 |
---|---|---|
3 | フタル酸ビス(2-エチルへキシル)(DEHP) | 2015.2.21 |
4 | フタル酸ベンジルブチル(BBP) | 2015.2.21 |
5 | フタル酸ジブチル(DBP) | 2015.2.21 |
7 | フタル酸ジイソブチル(DIBP) | 2015.2.21 |
なお、これまでにcandidate listに収載されているフタル酸エステル化合物(2015年6月15日時点で)は14物質あります2)。これらの中で附属書XIVへの収載提案がされていないのは下記の3物質です。
#11については、物質名「4-ノニルフェノールエトキシレート」の同族物質が、分解すれば内分泌かく乱物質とされている4-ノニルフェノールを生成することから、グループとして附属書XIVに収載することが提案されています。
#12から#15までのホウ酸及びホウ酸塩類は、広く肥料に用いられていることや原子炉での中性子吸収剤として用いられていることから、認可申請対象用途からの除外の要望が出されていましたが、今回の勧告案では除外用途の提案は行われていません。
今回の勧告案が正式に採用されるのは、第5次附属書XIVの勧告案(2014年2月提案)がまだ公布されていないことから、1年以上先になると予測しています。
(林 譲)
1)http://echa.europa.eu/view-article/-/journal_content/title/echa-proposes-15-substances-for-authorisation
2)http://echa.europa.eu/web/guest/candidate-list-table