ここが知りたいREACH規則

ここが知りたいREACH規則

EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介

2016.11.18

タイ 有害物質規制の新たな動き

タイでは既存化学物質の国家化学物質インベントリを作成し、REACH規則に類似した新規化学物質規制制度が予定されています。
 タイの化学物質管理は、工業省(Ministry of Industry:MOI)の工場局(Department of Industrial Works:DIW)が1992年(仏歴2535年)に制定した「有害物質法」*1で規制しています。有害物質法では、有害物質は第4条で次の性状物質と定義しています。
 *1 http://www.diw.go.th/hawk/law/haz/21.pdf

  • 爆発物
  • 可燃物
  • 酸化物、過酸化物
  • 毒性物質
  • 病原物質
  • 放射性物質
  • 遺伝子突然変異をもたらす物質
  • 腐食性物質
  • 刺激性物質
  • 人、動物、植物、財、環境に危険な化学物質やその他の物質

有害物質のリストは、第18条で管理のために4分類されます。

  • 第1種有害物質
    • 当局への届出を必要としないが、告示に従って対応する
  • 第2種有害物質
    • 事前に当局に届け出をしなければ、製造、輸入、保有ができない
  • 第3種有害物質
    • 当局の許可がなければ製造、輸入、保有ができない。
    • 有害物質の製造許可申請
    • 製造施設、貯蔵施設、機器及び書類の正確性を検査
    • 検査報告書は30日以内に作成
    • 20日以内に許可申請書の内容を検討
    • 貯蔵施設の検査
    • 書類の正確性の検査後10日以内に検査報告書を作成し、10日以内に許可申請書の内容が検討される
  • 第4種有害物質
    • 製造、輸入、保有が禁止される物質
    • 試験分析に用いられる標準物質は、書面により許可を受けることで適用除外となる

有害物質は、DEB(エネルギー事業局)、DIW(工場局)、DOA(農業局)、DOL(畜産局)、DOF(水産局)、FDA(食品・薬品管理局)、OAE(原子力局)の共同管理がされています。
 有害物質は、リスト1:農業局698物質、リスト2:水産局21物質、リスト3:畜産局36物質、リスト4:食品・薬品管理局258物質、リスト5:工場局570物質、リスト6:原子力局2種類で、リストはB.E. 2556(2013)*2(英訳*3)に収載されています。
 *2 http://www2.diw.go.th/Haz_o/hazard/lawsnew/9.pdf
 *3 https://www.jetro.go.jp/thailand/pdf/hazardlist13_eng.pdf
 工場局のリスト5は、2015年2月10日に有害物質リストが修正告示(2015年1月5日付)されて、リスト5.6が追加されました。
 5.1 明確な識別子を持つ規制化学物質
 5.2 廃棄化学物質
 5.3 電気電子機器使用化学物質
 5.4 その他のHCFCs(hydrochlorofluorocarbons)のような化学物質
 5.5化学兵器
 5.6 有害物質法の有害物質の定義を満たすその他のすべての化学物質
 http://www.diw.go.th/hawk/law/haz/12.pdf
 リスト5.6の収載対象物質は、第1種有害物質で、分類は、GHSの第3版で2012年のタイ工業省告示 「有害物質の分類および危険有害性情報の伝達システム(B.E.2555)」*4によります。
 *4 https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/moinoti2555_tha.pdf
 なお、B.E.2555は2013年3月13日から単一物質、混合物は2017年3月13日から適用されます。
 2016年8月に第一次リスト(Thailand National Chemical Inventory)*5が公開されました。最終リストは2017年に作成されます。
 *5 http://haz3.diw.go.th/invhaz/
 既存物質インベントリは、次から作成されます。

  • 工場局(DIW)のデータベースに収載されている物質
  • 2016年12月31日までに届出されたリスト5.6に収載されている物質
    2016年12月31日までに届出されない場合は、新規物質として扱う
  • 工場局の有害物質リスト
  • 2014年~2016年に輸入された化学物質

事実の届出書の要求は次が要件となります。

  • 輸入または製造する化学物質または混合物
  • 特別の法令がない
  • DIWが所管する物質である。
  • 有害性物質リスト(5.1~5.5)に該当しない。
  • 有害物質リスト5.6の特性を有する。
  • 1トン以上/年 以上

この要件を満たす場合は、輸入後60日以内にWeb入力となります。この案内*6をJETROがまとめています。
 *6 https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/updatedhazardsubstancelist5point6.pdf
 事業者からの届出資料を収集することで、現有化学物質リストを制定し、タイにおける化学物質に対してより適切な規制を実施することを目的としています。
 事実の届出書*7は最初の1回だけです。
 *7 http://haz3.diw.go.th/hazvk/
 届出、入力のためのマニュアル*8 *9が用意されています。
 *8 http://eis.diw.go.th/haz/hazdiw/eservices.htm
 *9 http://php.diw.go.th/haz/wp-content/uploads/2016/09/user_doc1.pdf
 事実の届出書入力情報は次のように、SDS記載事項が過半となります。

  • 自然人/法人名・住所・国籍・納税者番号
  • 輸入・製造の区別
  • 化学物質の種類:物質・混合物
  • 商標名・HSコード
  • 化学物質/製品の成分情報
    • 化学物質名・化学式・CAS No・百分率
    • 構成の間違いによる責任は届出者による
  • 化学物質の状態:固体・液体・ガスの区別
  • 化学物質/製品の形状
  • 収納容器の形状
  • 製造者または製造元
  • 販売者名
  • GHSに基づく危険有害性の分類
  • SDSの内容(タイ語または英文SDS添付)
    • 物理的化学的特性/有害性情報/生態学的情報/処分時の配慮事項/適用

様式は下記ページにあります。
 http://www.ratchakitcha.soc.go.th/DATA/PDF/2558/E/041/15.PDF
 混合物の構成物質は100%開示が要求されています。

リスト5.6に収載された物質の届出により、既存物質リストが網羅されます。既存物質が確定すれば、新規物質についての規制が開始されます。EU REACH規則に類似した法改正がされるといわれています。
 詳細情報が入手できた時点でご案内をします。

(松浦 徹也)

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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