EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2018.09.14
殺生物性製品規則(Regulation(EU)No.528/2012、以降BPRと略称)は、従来法である殺生物製品指令(Directive 98/8、以降BPDと略称)の後継法令として2013年9月1日に公布され、BPDは廃止されました。
2000年5月14日以前にEUに上市されていた活性物質(既存物質)については、「見直しプログラム」により体系的に評価することが定められ、見直しプログラムの評価結果が適用されるまでは、各国のルールに基づき上市を認める移行措置が設けられていました(PBD 第16条、附属書I)。
現行のBPRにおける見直しプログラムは、先行法令であるBPDにおける見直しプログラムを引き継ぐもので、見直しプログラムの評価対象となる物質は、委員会委任規則(EU)1062/20141)(2014年10月10日付EU官報L294)の附属書に収載されており、順次評価が進められています。
見直しプログラムにおける評価の結果、活性物質と製品タイプの組合せが承認された場合、従来の加盟国のルールではなく、新しい要求への適合が必要となります。新要求への適合には必要な準備措置を要するため、猶予期間として官報公示と承認日に合理的な期間が設けられます。
BPR第3条1(c)の定義に従えば、活性物質とは「物質あるいは微生物で、それ自身が直接あるいは間接的に有害物質に対し作用を及ぼすもの」を言います。また、活性物質は承認されていなければならず、その有効期限は通常の場合で最長10年間となっています。
バイオサイド製品の上市の際には、認可が必要で、以下がその認可条件となります。
活性物質は、BPRの附属書Vに以下の4つのメイングループとし22の製品タイプに分類されています。
メイングループ | 製品タイプ |
---|---|
1. 消毒剤 | (1)人間衛生用 (2)人間、動物に直接使用しない消毒剤 (3)動物衛生用 (4)食品、飼料用 (5)飲料水用 |
2. 保存剤(微生物、藻類の発生抑制) | (6)保管時用 (7)表面被膜用 (8)木材用 (9)繊維、皮革、ポリマー用 (10)建設材料用 (11)液体冷却処理システム用 (12)スライム防止用 (13)切削加工用 |
3. 有害生物駆除剤 | (14)鼠抑制用 (15)鳥抑制用 (16)軟体動物そのほかの抑制用 (17)魚抑制用 (18)殺虫剤、殺ダニ剤、そのほかの抑制用 (19)忌避剤、誘引剤 (20)ほかに含まれないもの |
4. その他 | (21)船舶、水産、そのほかの水中構造物の汚染防止用 (22)剥製用 |
欧州委員会(以降「EC」と略称) は、BPRの活性物質と製品タイプの組合せに関し、8月14日に以下の3種の活性物質と製品タイプの組合せ承認を官報公示しました。
一般名 (Common Name) |
CAS番号 EC番号 |
ラポーター | 製品 タイプ |
承認日 | 承認期限 |
---|---|---|---|---|---|
Commission Implementing Regulation (EU) 2018/11292) | |||||
アセトアミピラッド (Acetamiprid) |
EC No:None CAS No:135410-20-7 |
ベルギー | 18 | 2020/2/31 | 2027/1/31 |
Commission Implementing Regulation (EU) 2018/11303) | |||||
シペルメトリン (Cypermethrin) |
EC No:257-842-9 CAS No:52315-07-8 |
ベルギー | 18 | 2020/6/1 | 2030/5/31 |
Commission Implementing Regulation (EU) 2018/11314) | |||||
ペンフルフェン (Penflufen) |
EC No:not available CAS No:494793-67-8 |
UK | 8 | 2019/2/1 | 2029/1/31 |
以下に、今回の官報公示された3つの委員会実施規則(2018/1129、2018/1130および2018/1131)の概要を紹介します。
今回、官報公示された活性物質は、バイオサイド製品に使用される活性物質の見直し評価とする委員会委任規則(EU)No.1062/2014の既存活性物質リストに収載されていました、アセトアミピラッド(CSA No 135410-20-7、エントリー番号848)、シペルメトリン(CAS No.543215-07-8)およびペンフルフェン(CSA No.494793-67-8)です。
見直し評価にあたっては、上表に示すように、対象物質ごとに加盟国の評価権限当局がラポーターに任命されています。
各委員会実施規則の活性物質の評価結果は、以下のとおりです。
(1)アセトアミピラッドは、殺虫剤、殺ダニ剤、その他の昆虫制御製品としてBPR附属書Vに記載されている製品タイプ18の製品の使用に対し評価されました。ラポーターであるベルギー評価権限当局が2015年7月27日に評価報告書とリコメンデーションを提出していた結果に基づき、委員会委任規則(EU)No.1062/2014の第7(2)条に従って、2017年12月14日に欧州化学物質庁(以降ECHA)のバイオサイド製品委員会(BPC)により以下の意見がとりまとめられました。
BPCの意見によりますと、アセトアミピラッドを含有している製品タイプ18のバイオサイド製品は使用の際、特定の仕様と条件に従っている場合は、BPRの第19(1)(b)の基準を満たすことが期待できるので、アセトアミピラッドは製品タイプ18のバイオサイド製品の活性物質として承認することが妥当であると結論づけています。
ECHAは、アセトアミピラッドはREACH規則附属書XIIIのvP(極めて難分解性)およびT(毒性)の基準に適合すると結論しています。したがって、アセトアミピラッドはBPRの第10(1)条d項の規定に該当している代替されるべき候補物質と見做されています。BPR第10(4)条に従い、代替されるべき候補物質と見做される活性物質の承認期限は最長でも7年を超えることはありません。今回の場合は、承認日が2020年2月1日で、承認期限は2027年1月31日となっており、有効期限は最長の7年間となっています。
アセトアミピラッドはREACH規則附属書XIIIのvPの基準に適合しているので、アセトアミピラッドにより処理されている、もしくは一体化している処理成形品は、上市の際には適切なラベル表示が必要となります。
(2)シペルメトリンは、殺虫剤、殺ダニ剤、そのほかの昆虫制御製品としてBPR附属書Vに記載されている製品タイプ18の製品の使用に対し評価されています。
ラポーターであるベルギーの評価権限当局が2015年4月15日に評価報告書とリコメンデーションを提出していました。委員会委任規則(EU)No.1062/2014の第7(2)条に従った評価権限当局の結論に基づいて、2017年5月5日に、ECHAのBPCにより下記の意見がとりまとめられました。当該意見では、シペルメトリンを含有している製品タイプ18のバイオサイド製品はその使用時に特定の仕様と条件に準ずる場合は、BPRの第19(1)(b)の基準を満たすことが期待できるので、シペルメトリンは製品タイプ18のバイオサイド製品の活性物質として承認することは妥当であるとしています。
なお、シペルメトリンは内分泌攪乱物質である可能性があるため、規則(EU)No. 1107/2009に従って、その評価が実施されています。2018年末にはその結論が出ることになっています。この評価で内分泌攪乱物質であるという結果が出ますと、BPRの第15条に従って、シペルメトリンの承認が見直される可能性があります。
(3)UKの評価権限当局は製品タイプ8(BPR附属書Vに記載されている木材防腐剤など)のバイオサイド製品に使用するための活性物質としてペンフルフェンの承認申請を2015年7月7日に受理していました。
UKの評価権限当局はBPR第8(1)条に従って、2017年2月28日に評価報告書とリコメンデーションを提出していました。
評価権限当局の結論に基づいて、2017年12月14日にECHAのBPCにより下記の意見がとりまとめられました。
当該意見では、ペンフルフェンを含有する製品タイプ8のバイオサイド製品は、それらの使用に関し特定の仕様と条件に従っていれば、BPRの第19(1)(b)の基準を満たすことが期待できるとされています。
そのため、特定仕様および条件に従っていれば製品タイプ8に使用するためにペンフルフェンを承認することは適切であるとされました。
ECHAの意見によればペンフルフェンはREACH規則附属書XIIIのvPの基準に適合しているので、ペンフルフェンにより処理されているか、もしくは一体化している処理成形品は、上市の際には適切にラベル表示しなければならないと結論しています。
1)https://eur-lex.europa.eu/legal-content/en/TXT/?uri=CELEX%3A32014R1062
2)https://eur-lex.europa.eu/eli/reg_impl/2018/1129/oj
3)https://eur-lex.europa.eu/eli/reg_impl/2018/1130/oj
4)https://eur-lex.europa.eu/eli/reg_impl/2018/1131/oj
(瀧山 森雄)