EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
貴社がご懸念の事態を回避する方法としてREACH規則には第4条および第8条に代理人制度があります。一般的には輸入業者にはREACH規則が要求する登録時の情報や評価時のレスポンスをする知識が少ないと思いますので、この制度の活用をお勧めします。
第4条の第三者の代理人(a third party representative)と第8条の唯一の代理人(only representative)がそれです。ただし、第三者の代理人については域内の製造業者、輸入業者、または該当の川下ユーザーが指名できるもので、貴社のケースには該当しないと思いますので説明を省略します。
貴社が使える「唯一の代理人」制度では、EU域内に物質、調剤中の物質またはアーテイクルを輸出するEU域外の企業である貴社が相互の合意のもとで、EU域内の法人または自然人を唯一の代理人に指名することで、その代理人に規制の主要内容である登録に限らずREACH規則などの順守の代理をさせることができます。唯一の代理人はこの規則の下では輸入業者のほかのすべての義務を順守しなければなりません。唯一の代理人は、域外の製造業者が指名するものですが、域外の製造業者にはEUの法律順守義務がないので、法的には事実上域外の製造業者の代理をするのではなく、EU法令の順守義務のある輸入業者の代理をすることになります。
このために、本規則では、「唯一の代理人」が物質の実際の取り扱いに関する十分な背景とそれに関する情報をもたなければならないとし、また、以下の情報について利用を可能にして、かつ最新状態に維持することを要求しています。
そして、唯一の代理人が指名されると域外の製造業者である貴社は同じサプライチェーン内の輸入業者に指名の事実を知らせなければなりません。
この規則のためにこれらの同じサプライチェーン内の輸入業者は川下のユーザーとみなされることになり、第36条(情報維持の義務)により、義務遂行に必要な情報の編集・維持や当局への情報の提供などの義務を負います。
また、輸入業者任せにするのではなく、「唯一の代理人」を指名することは域外の製造業者である貴社が直接登録手続き全体を管理することができ、輸入業者にノウハウなどの情報開示をしなくてよいという利点があります。しかし、常に唯一の代理人を指名すればよいわけではありません。輸入業者が域外の製造業者の同一物質を扱っており、登録済みの場合は、輸入業者を利用する方が簡単です。登録に輸入業者を使うか、唯一の代理人を指名するかは貴社が自由に選択できますので、時と場合により経営戦略として決定されるのがよいと思います。