EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
第1のご質問についてお答えします。
REACH規則の第6条第1項に、
「1.本規則が別に定める場合を除いて、年間1tまたはそれ以上の量の物質そのものまたは1つもしくはそれ以上の調剤に含まれる物質の製造者または輸入者はいずれも、化学品庁に登録を提出しなければならない。」*
とあります。
ここでいう製造者とは、欧州共同体(以降「EU」と略称)域内で物質を製造するEU域内に所在する自然人または法人を言います。
また、輸入者とは、輸入に責任をもつ、EU域内に所在する自然人または法人を言います。
そこで、日本の原料メーカー各社は現地法人などの「輸入者」によって、化学品庁に登録を提出するか、第8条により、原料メーカー各社が指名した唯一の代理人を通じて登録をすることができます。
REACH規則の第6条第3項に、
「3.ポリマーの製造者または輸入者はいずれも、以下の2つの条件が満たされる場合には、サプライチェーンの川上の行為者により登録されていないモノマー物質またはほかのいかなる物質については、化学品庁に登録を提出しなければならない。
とありますので、川上の行為者である原料メーカー各社が当該物質を登録した場合は、貴社は当該物質を登録する必要はありません。
ご質問にあります欧州既存商業化学物質リスト(EINECS)に記載されている物質は段階的導入物質です。
REACH規則の第28条「段階的導入物質の予備登録の義務」の第1項に、
「1.第23条に定めた移行過程の恩恵を得るためには、年間1tまたはそれ以上の量の段階的導入物質(限定条件のない中間体を含む)の各潜在的登録者は、以下のすべての情報を化学物質庁に対し提出しなければならない。
とあります。
化学品庁へは、2008年6月1日から2008年12月1日までの間に予備登録ができ、各潜在的登録者は登録の猶予等を定めた第23条の「段階的導入物質に対する移行過程の恩恵」を得ることになります。また、化学品庁は、2009年1月1日までに上記の第1項(a)と(d)に記す物質のリストをウェブサイト上で公表しなければならないことになっています。そのリストの公表後、リストに掲載されていない物質の川下使用者は、化学物質庁に対し、物質に関する関係、連絡先の詳細、現行の供給先の詳細を届け出ることができ、化学品庁は、その物質の名称をウェブサイト上で公表し、要請に基づき、潜在的登録者に対して川下使用者の連絡先の詳細を提供しなければならないとされています。
次のご質問についてお答えします。
基本的に商取引における契約の内容になります。売買契約で登録に関する事項を定めておくことが肝要です。
REACH規則の前文55で、
「物質そのものまたは調剤に含まれる物質の製造者および輸入者は、その物質を登録する意図があるかどうかを、その物質の川下使用者と連絡するよう奨励されるべきである。もしその製造者または輸入者がその物質を登録する意図がないならば、川下使用者が代替の供給源を探すことができるよう、該当する登録期限の十分前に、川下使用者にそのような情報が提供されるべきである。」*
としています。
このような認識でのREACH規則の運用であり、ご質問のような事態は、EUの商慣習では許されないものです。前文は拘束力のないものですから、取引条件として明確にしておくことが必要です。
貴社が予防登録することは可能ですが、できるだけ避ける方策をとることをお勧めします。
予備登録は唯一の代理人により行いますが、費用の問題と代理人が多くないのが現実のようです。
*REACH規則 環境省仮訳 http://www.env.go.jp/chemi/reach/reach.html