EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
クレーンなどはREACH規則では成形品の扱いになります。油圧オイル自体は調剤になります。ご質問は成形品に含有する調剤の扱いについてです。
成形品の登録義務は、年間1t以上の意図放出物質が対象です。油圧機構の詳細を承知しておりませんが、常識的にはクローズした状況で使用すると思われ、通常の使用状態では意図的な放出はないと思われます。予想される使用条件ですと、事故やメンテナンス時にオイルの漏洩が懸念されます。ただ、この漏洩は意図した放出、機能上必要な放出ではないと解釈でき、意図的放出としての登録要件外と判断できます。
アメリカの有害化学物質規制法TSCAでも、変圧器の絶縁オイルを例示し、絶縁オイルは変圧器と一体とみなし、報告義務を免除しています。ただ、同じ絶縁オイルをドラム缶に入れて輸入する場合は、報告義務を課しています。
REACH規則でも同様に考えられると思います。
一方、成形品の届出義務は、成形品中に高懸念物質(SVHC)が年間1t以上で0.1wt%以上含有する場合です。油圧オイルにSVHCが0.1wt%以上含有していた場合の届出について検討してみます。
油圧オイルに関する安全情報はSDS、あれば登録番号から確認して、SVHCの含有を確認します。なお、SVHCリストは第59条で特定されますが、現在確定していません。
REACH規則の義務は成形品中にSVHCが0.1wt%以上となっていますので、クレーンなどの重量に比較して、油圧オイルの重量は微々たるものであり、オイルに高濃度でSVHCを含有していても実質的には対象外と思われます。
SVHCの濃度規制の分母については、REACH規則の条項をそのまま読めば、成形品となりクレーン本体となりますが、EU RoHS指令と同様に均質物質(homogeneous materials)にすべきとの意見もあります。多様なユーザー、消費者への対応準備として、製品の構成部材の物質、調剤の情報は整理して保有しておくことが肝要と思います。
一般的な範囲での判断では、登録や届出義務はないと思われますが、次項は留意しておくことをお勧めします。