EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
貴社が輸出している工業薬品が製造段階で3成分からなり、その後特に精製していないで出荷されているとのことですが、「製造段階」については、1.「物質の合成」の意味での製造段階と、2.「3成分を混合」するとの意味の2通りの可能性があります。1.の場合は、その製品そのものが一物質の扱いで、単一成分物質または多成分物質、2.の場合は調剤となります。ご質問のケースが、そのどちらかが明らかでありませんので、この2通りを考えて説明します。
1成分が80%以上の場合は、単一成分物質として特定します。そのほかの成分は不純物として、1%以上の成分を特定(ただし、PBTなどは0.1%以上)します。
80%以上の成分が、1成分もなければ、多成分物質として、10%から80%の範囲にある成分物質で物質を特定すします。1〜10%以下成分は不純物として特定(ただし、PBTなどは0.1%以上)します。
単一成分物質は単一の物質の扱いになりますので輸出量が年間1tを超えていれば登録の対象となります。
名前は主要成分の物質名で命名されます。以下の例では登録名はメタキシレンとして、登録トン数は1.5tとなります。
(例) | 成分 | 重量比(%) | 重量(t) |
---|---|---|---|
メタキシレン(主要成分) | 91 | 1.365 | |
オルソキシレン(不純物) | 5 | 0.075 | |
その他(不純物) | 4(1%以上無) | 0.06 | |
合計 | 100 | 1.5 | |
物質名:メタキシレン |
個々の成分が1tを超えていなくても、輸出量が年間1tを超えていれば登録の対象となります。例えば、貴社の多成分物質の成分組成を以下のように考えてみます。
(例) | 成分 | 重量比(%) | トン数 |
---|---|---|---|
オルソキシレン | 50 | 0.75 | |
パラキシレン | 45 | 0.68 | |
メタキシレン | 5 | 0.07 | |
合計 | 100 | 1.5 | |
物質名:オルソキシレンとパラキシレンからなる反応生成物 |
多成分物質の名前は、物質をつくる出発材料ではなく、多成分物質の中の10〜80%の成分からなる反応生成物として命名されます。命名の仕方は、含有率の高い物質から順番に列記します。上記の例では、「オルソキシレンとパラキシレンからなる反応生成物」となります。1%から10%未満の成分は不純物として特定します(PBT物質の場合は0.1%以上)。登録トン数は1.5tとなります。
なお、登録の方法としては、REACHのガイダンス文書においては、一般的には多成分物質として登録すべきとしておりますが、多成分物質を個別に登録する方法が許される場合があります。前記の例では、すべての成分が1t未満ですが、1t以上の登録が許される場合があります。このような場合、要求される情報を削減するために個別に登録することは許されませんが、以下に述べる条件が整い、正当と認められるならば個々の成分を個別に登録することはできます。
例えば、XとYからなる多成分物質を年間1,200t生産していたとし、その組成は、それぞれ50%であるとします。X、Yは個別に登録することはできますが、提出する情報はREACH規則の附属書X記載の1,000t以上に該当する情報が要求されます。
調剤の場合ですと、調剤中に含有する物質のそれぞれの年間輸出重量で登録が必要かどうか判定されます。