EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
REACH規則においては、EU域外で物質を製造し、調剤を調製し、成形品を生産する自然人または法人は彼ら自身で物質を登録することはできません。物質そのもの、調剤中の物質および一定条件を満たす成形品中の物質について、EUに輸入される物質の登録は、EUの「輸入者」あるいは「唯一の代理人」が行わなければなりません。
「唯一の代理人」については、REACH規則第8条1項に「欧州共同体に輸入される物質そのもの、調剤に含まれる物質又は成形品に含まれる物質を製造し、調剤を調製し又は成形品を生産する欧州共同体外に所在する自然人又は法人は、本篇に基づく輸入者の義務を果たすために、相互の合意によって欧州共同体内に所在する自然人又は法人を、唯一の代理人として指名することができる(環境省仮訳)」とあります。
したがって、貴社のEUの「輸出先」、すなわちEUにおける「輸入者」が欧州共同体内に所在する自然人または法人であれば、輸出先を「唯一の代理人」として任命することは可能と考えます。その場合、「唯一の代理人」として以下のことが求められます。
REACH規則第8条2項には「代理人は本規則に基づく輸入者の他のあらゆる義務も遵守しなければならない」とあり、「唯一の代理人」は輸入者に課せられている義務を果たすことを求められています。
すなわち、「唯一の代理人」は、物質の具体的な取扱いや輸入者の登録義務を満たす物質の情報について、十分な背景をもっていること、登録義務遂行に必要な情報の維持や当局へ情報提供を行うこと、輸入量、販売顧客情報およびSDS(安全性データシート)の最新情報を維持することなどの義務を負います。
「唯一の代理人」を任命するメリットは、貴社が登録プロセス全体を管理することが容易になり、機密情報など慎重さを要する可能性のある情報を含め情報が集約され一元化できることです。
その一方で、「唯一の代理人」には、貴社のほかの輸出先の営業情報を伝えることになります。他方、貴社の「ほかの輸出先(ほかの輸入者)」には「唯一の代理人」を任命したことを通知しなければなりません。「ほかの輸入者」は「唯一の代理人」の川下ユーザーとなり、登録の義務はなくなります。
その結果、「唯一の代理人である輸入者」にサプライチェーン内の情報が集約されることにより、取引上優位に立つことが想定されます。他方、「ほかの輸入者」がこの立場を嫌い、貴社からの輸出に頼らずに、別の供給業者に変更するといった可能性も否定できません。
輸出先を「唯一の代理人」として任命するか、「輸入者」として登録を依頼するか、あるいは輸出先とは別の「唯一の代理人」を任命するかは、貴社とほかの輸入者などのサプライチェーンの関係や状況を考慮して決定することが必要になると思われます。