EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
REACH規則では、「成形品とは、製造時に与えられる特定な形状、表面またはデザインがその化学組成よりも大きく機能を決定する対象物をいう」と定義されており、ユニッククレーンのような機械類は成形品として扱われます。成形品いついては以下の2つの義務があります。
1.登録義務
成形品中の物質が、合計して年間1tを超える量であり、その物質が通常のまたは予測可能な使用条件下で、意図的に放出される場合に、その用途で登録されていなければ登録の義務が生じます。
2.届出義務
成形品中に含まれるSVHC(高懸念物質)が重量比(w/w)0.1%を超える濃度で存在し、合計して年間1tを超える量である場合に、その用途が登録されていなければ届出の義務が生じます。
したがって、クレーンを構成している鉄そのものについては、ご指摘のとおり登録を行う必要はありません。
次に、「排出ガスの元となる化学物質の登録」についてですが、ご質問の自走式クレーンの運転時に排出されるガスの「元」となる化学物質については、ご質問ではその意味を明確に把握できませんので、2つの場合を考えて説明します。
(1)排出ガスそのものの成分である化学物質である場合
このような排出ガスはクレーン使用時に付随的に発生するものですので、附属書Vにおいて登録が免除されている、物質、調剤、成形品の使用時に生成し、それのもの自身は製造されていないものに該当しますので、登録する必要はないものと考えられます。
(2)燃焼によって排出ガスを発生させるオイルや燃料である場合
一方、生産者が出荷時などにクレーンに投入したオイルや燃料とする場合には、「容器中の物質/調剤」として登録を行う必要があります。つまり、2008年5月に発行された「Guidance on requirements for substances in articles」に記載のある、対象物に含まれる「物質/調剤」の判断基準【同書、3.3.2:特別な容器内/特別な担体物質上の物質/調剤と成形品の(一体化した)部分である物質/調剤との間の境界線のワークフロー】によると、上記のオイル・燃料は「物質/調剤の過半は物体の使用段階で消費、除去される」ものであり、「容器中の物質/調剤」と考えられるからです。
なお、当該オイル・燃料がその生産者などによってすでに登録されている場合には、貴社が登録を行う必要がありませんので、登録の有無を予めチェックされることが重要です。