EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
熱転写リボンのフィルムに塗装されたインクが調剤なのか、または成形品の「意図的放出」される物質に当たるのかどうかについての判断基準に関しては、成形品に関するガイダンス(注)で下記の通り整理されています。
ガイダンスでは、物質または調剤が対象物に含まれているとき、成形品と一体化しているかどうかを判断する基準に関して、ステップ1〜5まで5段階の基準を設けています(各ステップの詳細に関してはガイダンスp.28の図3をご参照ください)。各ステップの質問に回答することにより成形品と一体化しているかどうかの判断をすることになります。
まず、ステップ1で対象物に対し製造者・供給者が期待する機能の特定を行い、ステップ2、3で成形品と一体化しているかどうかの判断の明確化を行います。ステップ2、3で明確化ができない場合のみステップ4、5に進むことになります。
ガイダンスでは、ご質問の熱転写リボンを付録2の表8で説明しています。ステップ3まででは成形品と一体化しているかどうかの判断が明確化されないので、次のステップ4で下記の質問に回答することにより判断を行っています。
4a-Q 物質または調剤が対象物から除去され、そこから独立して使用された場合、または、
対象物と同様のタイプに変えられた場合、物質または調剤は原則としてまだ自身の機能を
果たせるかどうか。
4b-Q 対象物は、物質または調剤を放出するまたは制御するための容器または担体として
機能するかどうか。
4c-Q 物質または調剤は大部分が対象物の使用段階で消費されているか、またはそれ以外
の方法で、使用期間が終了時即ち廃棄前に、対象物の外に出ているかどうか。
上記の質問を熱転写リボンに当てはめて、下記の回答で説明しています。
4a-A 熱転写リボンを取り外して別のプリンターおよびワープロに取り付けた場合でもインク
を紙に転写し印字することができるということで回答はYES。
4b-A 熱転写リボンはプリンターおよびワープロに取り付けてインクの紙への印字を制御する
機能をもっているということで回答はYES。
4c-A 熱転写リボンはプリンターおよびワープロの使用中に消費され、インクがなくなった時点
で処分されるということで回答はYES。
上記質問に関しすべてYESで回答できることから熱転写リボンはインクを含む特殊担体という形の成形品に該当し、そして、フィルムに塗装されるインクは「調剤」と判断しています。
REACH規則に該当する場合、熱転写リボンのEU域内の製造者および輸入者は、
・熱転写リボンのインクに関しては、第6条による物質そのものまたは調剤に含まれる物質の一般的な登録、
熱転写リボンのフィルムに関して、SVHCが含まれる場合には、
・第7条2項による成形品に含まれる物質の情報の届出
・第33条による高懸念物質が含まれている場合の高懸念物質に関する情報の伝達
を行う義務が発生いたします。
(注)http://reach.jrc.it/docs/guidance_document/articles_en.pdf
また、訳文が下記URLから入手することができます。
http://www.chemical-net.info/pdf/Guidance_articles20080812.pdf