EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
附属書IVには、「その固有の特性により最小限のリスクしか生じないという十分な情報がある」との理由で登録が免除されている物質が掲載されており、セルロースパルプ(EINECS 番号265-995-8 CAS番号 65996-61-4)も収載されています。
附属書Vで「化学的に修飾されない場合、自然に存在する以下の物質」として登録義務が免除される物質類が示されています。
貴社製品はセルロースを原料A(以後「物質A」)で化学的に処理されていますので、附属書Vの免除要件を満たしませんので、登録義務があることになります。
高分子(ポリマー)そのものの登録義務はありませんが、ポリマー中に2wt%以上のモノマーが年間1t以上であれば、当該モノマーは登録義務があります。
ご質問のケースではセルロースを化学処理していますので、セルロースを構成する成分(モノマー)は登録免除と考えられますが、処理に用いられる物質Aは登録対象になります。
ご質問のケースでは川上企業がその物質Aを登録しているわけですから、基本的には貴社に登録義務はありません。
つまり、「すでに登録されている物質A」を使用してセルロースを化学的に処理した製品は、EU域内への輸出が可能と考えます。
ただし、以下の点を確認することが必要です。
貴社はサプライチェーンの川下企業として、川上企業に対して情報発信を行う義務があります。具体的な義務は以下のとおりです。
(1)その物質に関する危険な特性についての新しい情報(貴社の用途への関係の有無には関わらない)
(2)SDS(安全性データシート)で特定された用途上でのリスク管理手法の適切さに疑問を感じさせる新しい情報を得た場合
また、川上企業が物質Aを登録する際に、貴社の用途での登録がされる必要があります。そのため貴社は川上企業に貴社の用途を特定し、知らせる必要があります。それを怠ると登録の内容に貴社の用途を盛り込まれない可能性がありますので注意が必要です。よって、貴社は川上企業がその用途での必要書類を作成するのに十分な情報(特に量、用途、暴露シナリオなどリスク評価のために必要な情報)を提供する必要があります。
川上企業から川下企業に対しては以下の内容を情報伝達する義務がありますので、川下企業へ情報伝達をするための準備が必要となります。
さらに、危険な物質と分類される場合にはSDSなどの提出も求められます。詳しくは2008年10月31日コラム「REACH規則に見る情報伝達義務」をご参照ください。