EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
結論から述べますとREACH規則では成形品に意図的放出物がないことを証明する書類は不要ですが、高懸念物質(SVHC)に関する情報伝達と届出の対応が必要になる場合があります。
「成形品に含まれる物質に関する要求事項についてのガイダンス」(Guidance on requirements for substances in articles)の「6.1 成形品に関連する潜在的な要求事項の特定に関する作業フロー」を参照しますと、意図的放出物が無い場合は「登録」を行う必要がなく、「登録」を行わないことに関しても「さらなる行為が必要でない」旨が説明されています。
このほか上記のフローに従いますと、「高懸念物質(SVHC)が成形品中に、重量比0.1%を超える濃度で存在する」場合は、以下のとおり「情報伝達」を行うことが必要となります。
なお、REACH規則では、成形品中のSVHCの濃度は成形品全体の重量に占めるSVHC重量と規定されています。
さらに、成形品については次の条件を満たす場合には、7条第2項に従って化学品庁に「届出」を行うことが必要となります。
このようにREACH規則では意図的放出物の対応(つまり「登録」)のほかに、「情報伝達」と「届出」の対応が必要になります。この点、貴社製品は鉄を主要材料とするクレーンであり、その重量の大部分を鉄が占めることで0.1wt% の規定SVHC濃度を超えないことが想定され、前述のフローに従えばこの「情報伝達」や「届出」に関しても「さらなる行為が必要でない」可能性が高いものと考えられます。
しかし、これに対し、加盟国中6カ国(オーストリア、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、スウェーデン)が「個々の成形品、部品または材料」ごとに濃度の計算を行うべきであると主張し、反対意見を表明しております(この反対意見の内容は「Dissenting views on the Guidance on requirements for substances in articles」として公表されています)。J-Net21の平成21年9月19日コラム「成形品に含まれる高懸念物質の濃度基準」に関連記事を掲載しています。
EUは特定多数決の制度を導入しており、全345票のうち255票(約74%)以上の支持が必要ですが、加盟国中の6カ国が反対すると、この要件により採択されません。秋頃に発行されるGuidance Documentでは、成形品全体ではなく部品中の濃度のレベルになる可能性があり、部品レベルまで管理しておくことを推奨します。