EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
貴社の完成品(成形品)をEU域内に流通させる場合、一定の条件のもとでREACH規則における登録・届出(REACH規則7条)と制限(REACH規則67条)および情報提供の義務(REACH規則33条)に関する条項が適用される可能性があります。
7条に明記されている登録と届出に関しては、REACH規則が適用されるEU域内の完成品の輸入者および唯一の代理人に実行する義務があります。したがって、REACH規則が適用されない日本国内の貴社はこれらの義務の対象外になります。
次に33条の情報提供に関しては、貴社に少々関わってきますので詳しく述べたいと思います。
貴社の輸出する完成品の中に高懸念物質(2008年10月に一部が発表)が存在し、以下の条件に該当した場合、貴社の完成品のEU域内の輸入者は化学品庁、取引先に対し高懸念物質に関する情報を提供する義務が生じます。この義務は取引先より要求が無い場合でも発生します。しかも、消費者より情報提供の要求があった場合には、輸入者は45日以内に情報の提供を行う義務を生じます。
この情報提供に関しても貴社の完成品の輸入者には義務があります。ただし、輸入者がこの義務を果たすためには貴社の手助けが不可欠です。貴社の製品に関する情報の提供はREACH規則上の義務ではありませんが、EU域内に完成品を流通させるためには必要なものになります。
次に完成品メーカーが、REACH規則における貴社の関係する情報提供の有無を確認するためには、上述した高懸念物質に関する情報提供の必要条件に関して該当しているかを調べる必要があります。
最初に完成品中の高懸念物質の有無と含有量に関して調べることになります。完成品中の高懸念物質の有無と含有量に関しては、サプライチェーンの川上メーカーである完成品の構成部品を購入した先に確認することになります。この確認行為の仕組は日本国内で確立されていないので、取引契約の際に、情報伝達に関する条項を記載するか購入先に状況を説明して理解してもらう必要があります。
そして、高懸念物質が含まれており、含有量が情報提供の必要条件を満たしている場合は、高懸念物質の用途が登録されているか確認することになります。用途の登録の確認に関しては、高懸念物質の有無と含有量の場合と同様に、サプライチェーンの川上メーカーに確認することが一般的です。そして、それでもわからない場合は化学品庁のデータベースに問い合わせることになります。これらの手順に関しては環境省のガイダンス(環境省仮訳ガイダンス)に詳細が記載されています。
また、附属書XVIIに収載された物質とその用途は制限されます。この場合は1t以下であっても制限されますので留意しておくことが重要です。
サプライチェーン間の情報交換を円滑に進めるために、大手・中堅の川上、川下メーカー344社(2009年5月19日現在)の企業がアーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)を組織し、化学物質情報の管理や開示でREACH規則における共通の仕組みづくりを進めています。川上から川下の中小企業も加入できますので、JAMPの加入も検討課題と思われます。