EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
REACH規則(第3条3項)によると、「成形品とは、化学組成によって決定されるよりも大きく機能を決定する特定の形状、表面またはデザインが生産時に与えられた物体を指す」と定義されています。
これを貴社の例にあてはめると、電線ケーブル自体は成形品ですし、ハーネスもコネクタ部を含めて全体が成形品となります。貴社の製品に電線絶縁体のコンパウンドを使っておられれば、その製品一体として成形品の義務を考える必要があります。
REACH規則では、成形品に関しては登録と届出の義務を規定しています。
以下の2つの条件を満たす場合に登録が必要です(REACH規則第7条1項)。
(1)成形品中の物質が製造者または輸入者当たり合計して年間1tを超える量で存在する。
(2)成形品中の物質が通常または当然予想される使用条件で、意図的に放出される。
「成形品中の物質の要求事項に関すガイダンス」では、意図的放出とは、放出が成形品の付属的機能に寄与するか、または、放出が成形品の最終使用の機能に直接関係しない付加価値に寄与しない場合とされています1)。
したがって、一般的には貴社の電線ケーブルやハーネスには、意図的放出に該当するものは含まれていないと考えます。
届出は、以下の2つの条件を満たす場合に必要となります(第7条2項)。
(1)成形品中の物質が製造者または輸入者あたり合計して年間1tを超える量で存在する。
(2)成形品中に存在する高懸念物質(SVHC)の濃度が0.1wt%を超えている。
2009年6月21日現在、SVHCとして15物質が特定されています2)。その中に、プラスチック(特に塩ビ樹脂)の可塑剤として使用されるフタル酸エステルや短鎖長の塩素化パラフィンが含まれています。
これらの物質は、貴社製品の電線ケーブルやハーネスに使われるプラスチックや絶縁コンパウンドに含まれていないか確認しておかれることが必要と考えます。
届出の義務は2011年6月から発生します。ただし、その用途についてすでに登録されていれば、届出の義務はありません。
また、届出のほかに、SVHCの濃度が0.1wt%を超える場合には、トン数にかかわらず以下の情報伝達の義務がありますので、ご注意ください。
●最低限当該物質名を含む、当該成形品を安全に使用できるのに十分な情報を川下企業に提供。
●消費者の要求があれば最低限当該物質名を含む、当該成形品を安全に使用できるのに十分な情報を消費者に、要求を受けた日から45日以内に無償で提供。
1)http://guidance.echa.europa.eu/docs/guidance_document/
articles_en.htm?time=1245725928
http://www.env.go.jp/chemi/reach/reach/article.pdf
2)http://echa.europa.eu/doc/press/pr_08_38_candidate_list_20081028.pdf