EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
REACH規則では、提出した登録情報のすべてが公開されるわけではなく、企業秘密として取り扱われる情報と、取り扱われない情報があります。
EUの公文書開示を定めた規則(EC)No.1049/2001は、欧州化学物質庁(ECHA)が保有する文章に適用されます(REACH規則第118条1項)。ただし、REACH第118条2項では、以下の内容の情報の開示は、商業上の利益保護を損ねると考えなければならないとしています。すなわち、これらの情報は企業秘密扱いにできるものです。
(a)混合物の全組成の詳細
(b)中間体としての正確な用途、物質または混合物の正確な用途や機能、応用
(c)物質または混合物の正確な製造もしくは販売トン数
(d)製造者または輸入者とその流通業者または川下使用者との間の関係
ただし、上の項目に該当しても非常事態のような場合、例えば人の健康・安全または環境を保護するためや緊急的な行動が不可欠の場合には、ECHAは上述の情報を開示できるとしています。
以上に従って、REACH規則ではECHAが公開する登録情報を以下のように定めています。
I.ウェブサイトで公開される情報(REACH規制第119条1項)
(a)危険有害性に分類される物質のIUPAC名
(b)EINECSにある場合はその名称
(c)物質の分類および表示
(d)物質に関する物理化学的データ、および経路と環境運命に関するデータ
(e)毒性学的および生態毒性学的試験の結果
(f)推定無影響レベル(DNEL)または予想無影響濃度(PNEC)
(g)安全使用指針
(h)環境に放出された危険な物質を検知できる分析方法、および人の直接ばく露を測定できる分析方法
II.企業秘密として扱われる情報(REACH規則119条2項)
公表されることにより登録者または他のあらゆる関係者の商業上の利益が損なわれる、ということについての正当な根拠を持って提出し、それをECHAが認めた場合には公開されない情報です。
(a)分類と表示に必要な物質の純度および不純物/添加物
(b)正確なトン数
(c)上記(REACH規則)119条1項の(d)および(e)の情報に関する調査/ロバスト調査要約書
(d)上記(REACH規則)119条1項以外の安全データシートに含まれる情報
(e)物質の商品名
(f)6年間は、非段階導入物質のIUPAC名
(g)以下に用いられるIUPAC名
i 中間体
ii 科学的な研究開発
iii 製品や工程を見極めるための研究開発
また、物質交換フォーラム(SIEF)では、ECの独占禁止法を意識し、数量などの情報はやり取りされません。
なお、前述の「混合物の全組成の詳細」に関しましては、川下事業者に提供する安全データーシートの組成と成分に関する情報について、「その組成およびそれらの濃度の一般的記述は有用であるが、完全な組成(その構成成分の種類および濃度)を提供することは必要ではない」となっています(REACH規制附属書II)。
以上より、すべての情報を非公開にすることはできないものの、根拠のある正当な理由がある場合には企業秘密を保護することが可能であり、一定の範囲で企業秘密を守りながら取引を進めていくことはできます。