EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
「廃棄物と回収された物質のガイダンスのドラフト(以下、「ドラフト」と略します)」1)によれば、基本的には、ご質問の粉砕工程を含めて、リサイクル工程は、物質そのもの、混合物中や成形品中の物質を製造する工程と見なされます。したがって、ご質問の成形品を粉砕して回収された混合物Zは、登録対象となります。
ドラフトによれば、ご質問の粉砕により回収された混合物Zは、物質又は混合物と考え、登録義務を検討する必要があります。なお、貴社が回収混合物Zを物質として、あるいは、混合物中の各成分物質を、段階的導入物質として予備登録されている場合は、その登録期限までに登録すれば良いことになります。
ただし、REACH規則ではリサイクルされた物質については、以下の場合には登録が免除されています。
■第2条7(d)
第II 篇に従い登録され、欧州共同体内で回収される物質そのもの、調剤に含まれる物質又は成形品に含まれる物質であって、以下に該当するもの。
(i) 回収プロセスによって生じる物質が第II 篇に従って登録された物質と同一、かつ
(ii) 第II 篇に従って登録された物質に関し、第31 条または第32 条により要求される情報が回収を行う組織に利用可能
すなわち、回収された混合物Zと同じ物質が、自社やサプライチェーンに関係なくすでに登録されていれば、登録する必要はありませんが、登録されていなければ登録する必要があることになります。
ドラフトによれば、回収された混合物Z中の主成分の物質が80%以上で、残りの成分の物質が混合物の特性を発揮させるために意図的に添加されていなければ、不純物とみなせ、回収された混合物Zは一成分物質と見なすことができます。混合物の特性を発揮させるために添加されている物質は、たとえ20%以下であっても、一物質として登録義務があります。例えば、PVCに添加されている難燃剤は、少量であっても、上述の除外条項に適合しなければ(登録されていなければ)、登録が必要になります。
以下、代表的な2つの例で説明します。
1)回収された混合物Zがポリマーの場合:
回収された混合物Zが、ポリマー成分が80%以上でポリマー以外の物質を不純物と見なせる場合は、ポリマーの登録義務がありませんので、ポリマーを構成するモノマーや他の物質が既にが登録されていれば、登録の必要はないことになります。
2)回収された混合物Zが金属の場合:
回収された混合物Zが、一金属成分が80%以上であり、他の金属成分を不純物と見なせる場合は、主成分の金属が既に登録されていれば、登録は不要になります。主成分金属以外の金属が特性を発揮するために添加されていれば、その金属成分は、混合物中の金属成分として登録の必要性を判断する必要があります。また、回収された混合物Zに合金成分が含まれている場合には、合金成分が個々に登録されていれば登録不要になりますが、登録されていなければ登録義務があります。
回収された混合物Zの組成が特定できない場合は、UVCBとして登録することができます。UVCBの場合は、他社により登録されるケースはないと考えられますので(前述の登録除外条項を利用できない)、貴社で登録する必要があると考えます。
なお、物質の同一性の確認の詳細については、「物質の同定に関するガイダンス」2)をご参照ください。
1)http://guidance.echa.europa.eu/guidance4_en.htm
2)http://guidance.echa.europa.eu/docs/guidance_document/substance_id_en.pdf