EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
顧客への化学物質に関する情報提供は、日本、海外諸国とも「知る権利」として強化定着してきています。国よる化学物質の分類の調和、表示の調和、MSDSの調和を目的に国連の活動の枠組みでGHS注1)ができ上がりました。
GHSでは分析データなどの営業秘密に関わる規定もあり、情報開示に関する川上と川下双方への配慮がされています。海外諸国との取引では、まず、GHSによる分類、表示、包装、MSDSによる情報提供を基本とするのがよいと思います。
GHSは国により若干対応が異なりますが、EUが一歩先んじている感がありますので、EUへの対応を雛形にして個別対応することが効率的と思います。
EUでの対応を整理しますとつぎのようになります。
調剤(混合物)メーカーである貴社は、川下企業から情報提供を要求される以前に、REACH規則第31条により「危険な調剤の分類、包装および表示に関する指令(1999/45/EC)」に該当する場合などは、その数量に関係なく安全性データシート(SDS)を川下企業に提供する義務があります(1999/45/ECの基準は、2009年1月20日に施行されたCLP規則に順次移行されます)。
上述に該当しなくても、以下の事項に該当する場合は、川下企業の要求によりSDSの提供義務が発生します。
これらを考慮して貴社の対応方法を考えてみますと、貴社を含むサプライチェーン上でSVHCが含有される場合はつぎの2つの場合に分けられます。
上述のどちらの場合であっても、貴社が独自にMSDSを作成することが必要となりますが、つぎに示す時期によって対応方法が異なります。
時期により異なった対応が必要でも、まずREACHに対応していれば顧客要求は満足されていますので、貴社が求められているSVHCの分析結果データの提出は不要であることを顧客に主張することが可能となります。
分析データは混合物の詳細な組成の開示になり、営業秘密が開示されることにもなり、正当な権利として要求は受け入れられないと主張されてみることをお勧めします。
ただし、提出しないことにより顧客との取引停止といった事態にならないためにも、上述の対応が顧客にとって必要としている情報の提供と何ら変わらないということを正しく理解してもらうことが重要です。
注1)GHSとは、物質及び混合物をヒトおよび環境への危険有害性に応じて分類するための判定基準やラベル、およびSDSに関する要件とそれらの情報伝達に関する事項を含む世界共通の統一されたシステムです。
この分類に従ったMSDSを提出することで該当する有害化学物質の組成を判別することができる仕組みです。
GHSは世界共通ですが、国により法規制の引用や運用が若干異なります。顧客の国の基準は確認しておく必要があります。
日本:JIS Z 7250~7251
EU:CLP規則
中国:GB/T16483 GB20576~GB20602(GB20600は欠番)