EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
欧州では、REACH規則附属書XIIIで定義されています。附属書XIIIは修正され、2011年3月16日に公布されています1)。修正では、物質そのものの情報だけでなく、分解物等も含めて関連する情報から特性を評価することになりますが、PBT等の基準に変更はなく、以下の通りです。
●PBT物質:以下の3つの基準をすべて満足する物質
(a)残留性(難分解性 P):
-海水中での半減期が60日以上
-または、淡水もしくは河口水中での半減期が40日以上
-または、海の堆積物中での半減期が40日以上
-または、淡水もしくは河口水堆積物中での半減期が120日以上
-または、土壌中での半減期が120日以上
(b)生物蓄積性(B)
水生生物の生物濃縮係数(BCF)が2,000以上
(c)毒性(T)
-海水または淡水生物に対する長期無影響濃度(NOEC)が0.01mg/l未満、
-または、CLP規則により、発がん性(1Aまたは1B)または変異原性(1Aまたは1B)または生殖毒性(1A、1Bまたは2)
-または、CLP規則により、反復暴露の特定標的毒性(1または2)のような慢性毒性の証拠がある場合
REACH規則では、10t以上の場合には化学品安全報告書の作成とともに、SDSに暴露シナリオの添付が必要になります。
新規化学物質の審査では、1999年11月4日付け官報(64FR60194)「Category for Persistent, Bioaccumulative, and Toxic New Chemical Substances」に分類基準が制定されていますが、オンラインでスクリーニング評価ができる「PBT Profiler」では、以下の3段階の有害性のレベルが設定されています2)。各レベルの組合せで規制が行われることになります。
残留性(P)のレベル | |||
---|---|---|---|
低(P1:残留性) | 中(P2) | 高(P3) | 水系環境における半減期 | <2カ月 | >2カ月 | >6カ月 |
生物蓄積性(B)のレベル | |||
---|---|---|---|
低(B1:非蓄積性) | 中(B2) | 高(B2) | 魚類のBAFあるいはBCF | <1,000 | ≧1,000 | ≧5,000 |
毒性の懸念(T)のレベル | |||
---|---|---|---|
低(T1:非毒性) | 中(T2) | 高(T2) | 魚類の慢性毒性(ChV) | >10mg/l または飽和溶液で無影響 |
0.1~10mg/l | <0.1mg/l |
P2B2T2以上の新規物質については、同意指令による規制がとられ、その物質については重要新規利用規則(SNUR)の対象になります。P3B3T3の物質については、試験結果で規制方策が作成されるまでは生産・輸入は禁止されます。既存物質で重要新規利用規則(SNUR)に指定された物質は、製造、輸入または使用する場合は、その化学物質に規定された要件を順守する必要があり、その要件を満たせない場合は、90日前までに重要新規利用届出(SNUN)を提出する必要があります。
わが国では、「新規化学物質に係る試験並びに第一種監視化学物質及び第二種監視化学物質に係る有害性の調査の項目等を定める省令」に定められています。以下の試験により判断するとされています3)。
(a)残留性(難分解性 P)の基準:良分解性でないこと
微生物等による化学物質の分解度試験によるBODによる分解度が60%以上を良分解性。
(b)生物蓄積性(B)の基準:濃縮度試験またはPow測定試験による
-濃縮倍率が5,000倍以上の物質は高濃縮性
-濃縮倍率が1,000~5,000倍の時は、排泄試験、部位別(可食部)の濃縮倍率を考慮して高濃縮性かどうかを総合的に判断。
-濃縮倍率が1,000倍未満、または、1-オクタノール/水分配係数(Pow)の常用対数が3.5未満である場合は、高濃縮性でない。
(c)毒性(T):以下の試験で陽性である場合
-細菌を用いる復帰突然変異試験
-ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験またはマウスリンフォーマTK試験
-28日間反復投与毒性試験または90日間反復投与毒性試験
(d)生態毒性試験:藻類生長阻害試験、ミジンコ急性遊泳阻害試験および魚類急性毒性試験の結果から以下の3段階に分類
-3種の試験でのL(E)C50値の最小値がおおむね1mg/l以下のもの
-3種の試験のL(E)C50値のいずれかがおおむね1mg/l超、10mg/l以下のもの(上記に該当する場合を除く)。
-3種の試験のL(E)C50値の最小値がおおむね10mg/l超のもの
1)http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2011:069:0007:0012:EN:PDF
2)http://www.pbtprofiler.net/
3)http://www.safe.nite.go.jp/kasinn/pdf/hanteikijun.pdf