EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
REACH規則第7条(2)において、成形品の製造者、輸入者は成形品中に含まれるSVHCが以下の両条件を満たす場合、ECHAへの届け出が義務付けられています。
また、第33条において、成形品中のSVHC濃度が0.1wt%を超える場合、川下ユーザーあるいは消費者に当該SVHCの情報を伝達する義務があります。
SVHCを含む成形品の濃度計算方法は、REACH規則の「成形品中の物質への要求に関する手引」(1) に記載されています。
それによれば、成形品を構成する部品に含まれるSVHCの含有量の積算値を分子とし、成形品の全体重量を分母として成形品中のSVHC濃度を算出するよう説明しています。
しかし、このような成形品全体を分母とした濃度計算方法に対して、濃度計算は構成部品単位で行うべきであるとの異論がフランスやドイツなどの加盟国の一部から出ていました。
そのような状況において、Q300で説明しましたように、6月8日に公示されたフランス官報は、SVHCの濃度計算方法を成形品の構成部品単位で該非判断を行い、届出、情報提供を行うという内容のものでした。
再度、以下にフランス官報の事例を紹介します。
この官報では、金属製のバックルと革ストラップから構成されているベルトを扱う輸入業者の例を説明しています。
i)2010年1月13日に認可候補物質リストに収載されたSVHCが革ストラップに0.2wt%含まれている*1)。
ii)当該SVHCは金属部には含有されておらず、製品 (ベルト)全体のSVHC濃度は0.05wt%である。
iii)当該SVHCを年間1.5t取り扱っている。
(*1:フランス官報では金属部にSVHCを含有するとなっており、当該官報の後段で革ストラップに含有するようになっています。金属部に特定されているSVHCが含有されることは考えられませんので、上述のように内容を修正しています。)
この例ですと、ECHAのガイダンスに従えば、ii)から0.05wt%<0.1wt%となり、この輸入業者は、届出および情報伝達の義務は生じません。この点に関し、フランス官報は、輸入業者に対し、i)により0.2wt%>0.1wt%であるから、情報伝達義務かつiii)により届出義務に該当するとして、ECHAのガイダンスとは異なった対応を求めています。
フランスでは上述のようにEU域外から輸入される場合、ガイダンスによるi)に関する情報が伝達されないこと、およびiii)の届出の不要を是正するために輸入業者に構成部品単位での対応を求めているものです。
この場合、ご質問の構成部品とは、成形品全体が複数の成形品から構成されている場合の個々の成形品が該当します (上述のベルトの例では、金属部と革ストラップが構成部品に該当し、RoHS指令でいうところの均質材料とは異なります) 。