EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
REACH規則ではSVHCに関して以下の義務があります。
ご質問のようにCandidate ListにSVHCが追加されると、対象となるSVHC の安全取扱情報の調査が必要となります。川下企業が、独自に自社製品に使用する全ての物質の情報を調査することは物理的にまた費用面からも難しいため、サプライチェーンの川上企業が調査し、情報を提供することが求められてきます。
ただし、追加された物質の調査が不要な場合も考えられます。追加されたSVHC の主な用途については、ECHAの公表の資料に掲載されています。これらの用途が、川上企業が扱っている製品群とはまったく関係ないと判断できる場合もあるためです。こうした判断への対応ではサプライチェーン内でのコミュニケーションが重要です。
Candidate Listに収載されるSVHCは以下の特性を持つ物質です。
(1)CLP規則によりCMR区分1a、1bに分類される物質
(2)REACH規則附属書XIIIの基準によるPBT、vPvB
(3)上記と同等の、人や環境に有害性のある物質(たとえば、内分泌かく乱物質のような物質)
これまでにCandidate Listに収載されたSVHCの内、発がん性(C)、生殖毒性(R)物質の中には、化管法や安衛法等でSDSの提供を指定されている化学物質があります。この場合、これらの物質を含む0.1%以上含有混合物については、材料メーカーからはSDSで含有情報が伝達されます(CLP規則で1a、1bに分類されるCR物質は、国内のGHS分類標準JISZ7252では区分1に対応します)。
SDS提供の閾値が0.1%以上でない場合や、SDS提供が指定されていない物質については、原材料企業からはその情報を提供して頂くことが必要になります。
川中の企業においては、この情報に基づいて、自社の川下企業の要求に従い、自社の製品へのSVHCの含有情報を提供することになります。
ただし、自社の使用材料にSVHCを含有しない場合は、これらの調査は不要と考えます。
なお、国内では川上企業から川下企業までのサプライチェーン内で情報伝達する仕組みが、JAMP(アーティクルマネジメント推進協議会)により提供されています。
JAMPでは、化学物質情報の伝達を円滑に実施することを目的にJAMP-ITというシステムです。化学物質をJAMP管理対象物質リストという形でデータベース化しており、SVHC もリストに取り入れられています。ただし、JAMP-ITを利用して情報を入手する場合には、企業規模別に設定されるなど中小企業に配慮した料金体系となっていますが、登録料や使用料が掛かります。JAMPの情報伝達の詳細は、アーティクルマネジメント推進協議会のWebサイトの「化学物質情報伝達におけるJAMP AIS・MSDSPlusの活用」「JAMP情報流通基盤の利用ガイドライン」などをご参照下さい。
2011年12月19日にcandidate listへの収載決定の発表があり、candidate listに収載されたSVHCは合計73物質になりました。2012年末には136物質を目指すとの発表もあります1)。
1) http://echa.europa.eu/documents/10162/17911/echa_newsletter_2011_6_en.pdf