EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
めっきの皮膜は、素材の表面を覆うことで素材の意匠性向上やさび発生抑制などを素材に与えます。そのため、REACH規則の成形品の定義にある「生産時に与えられる特定な形状、表面またはデザインがその化学組成よりも大きく機能を決定する物体」(REACH規則第2条3項)に該当しますので、めっきされた物体の成形品としての対応が必要となります。
REACH規則では、成形品中の物質に対しては意図的放出の登録および高懸念物質(SVHC)の届出と情報伝達等の義務があります。登録、届出に関しては、その物質がすでにその用途について登録されている場合は必要ありません。また、EU域外で認可対象になったSVHCを使用することおよび製造された成形品のSVHCについては認可の対象になりません。
めっきをした物品からは意図的放出物質は考えらません。従い、ご質問の三酸化クロムを用いためっき被膜のある物体(成形品)においては、登録や認可取得の必要はありません。届出と情報伝達の義務は三酸化クロムが「成形品」中に0.1wt%以上含有する場合に生じる場合があります。
この0.1wt%の含有率算出の分母は、成形品全体の重量となります。めっき槽の中で利用される三酸化クロム液はめっき被膜では金属クロムとなり、十分に洗浄された成形品に対しては、三酸化クロムは残存しないと考えられますので、REACH規則の義務はないことになります。
また、化成処理された被膜についても、皮膜処理の厚さから算出できる重量と成形品全体重量から判断しますと、通常の化成処理に被膜においても含有率は0.1wt%より小さくとなると考えられますので、実質的には関係は少ないと思われます。
2012年9月18日に、REACH規則附属書XIVの委員会規則の修正案として附属書XIV収載物質の勧告案がWTOへTBT通告されていますが1)、この勧告案に三酸化クロムは含まれています。この修正案は、2013年2月に附属書XIVは公布される予定です。修正案では、認可申請期限日は発効日から21カ月後(2月に公布の場合は2014年11月)、日没日は発効日から39カ月後(2016年5月)となっています。 EU域内で三酸化クロムを継続して製造・使用する場合には、認可申請をする必要があります。認可がなければ日没日以降は使用することができなくなります。
三酸化クロムのREACHの認可申請を準備するため、三酸化クロムの製造業者、輸入業者、ユーザである航空機産業など約150の団体・企業で、三酸化クロム認可コンソーシアム(CTAC: Chromium Trioxide Authorization Consortium)が設立されています2)。
CTCAでは、製剤処方、機能性クロムめっき、装飾めっき、表面処理、触媒などの目的で使用する場合の認可申請資料が用意される予定です。
1)http://ec.europa.eu/enterprise/tbt/tbt_repository/EU64_EN_1_1.pdf
2)http://www.enthone.com/Sustainability/~/media/CC1AAABB676F412AB023A0F037E88356.ashx