EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
ビスフェノールAの危険・有害性分類をカテゴリー2からカテゴリー1bに改定するCLP規則の改正案が公布された場合、同物質を予備登録し、年間1t以上EU域内に製造・輸入している企業は直ちに本登録に替えなければならない可能性があると考えられます。
REACH規則第23条では指令67/548/EECに基づいて区分1または区分2の発がん性、変異原性または生殖毒性に分類される物質であって、年間1t以上EU域内で製造・輸入される段階的導入物質に関しては、予備登録した場合の期限は2010年11月30日までとされています。
指令67/548/EECに関しては順次CLP規則に置き換えられ、物質に関しては2010年12月1日以降、混合物に関しては2015年6月1日以降適用が義務付けられることになりました。
CLP規則58条において区分1・区分2はそれぞれCLPのカテゴリー1a、1bに置き換えて解釈することが決められています。ただし、第58条で置き換えの対象となっているREACH規則の中に第23条はないので、第23条が置き換えの対象になるかどうかは厳密的には不明ですが、対象になると考えられます。
フランスか提出したビスフェノールAのCLP規則による分類の改定提案が承認された場合、CLP規則の改正案が公布されることになります。現在2013年10月13日期限としてパブリックコンサルテーションがが行われているところです。一般的にパブリックコンサルテーション終了後、早くても2年以上かかるのが多いようです。
欧州化学品庁が発行している「Guidance on registration」の51頁に予備登録の期限後に、REACH規則第23条に該当した場合の事例(例3)が下記の通りの内容で記載されています。
【例3】
V社によって製造されている予備登録済の段階的導入物資の量は2007年・600t、2008年・900t、2009年・1400t、2010年・2000tになります。2010年の過去3年間の平均が966tに対して2011年は1433tになります。
1000t以上の予備登録の期限は2010年11月30日とすでに過ぎているのでV社は予備登録の期限の利益を喪失し、2011年内に直ちに本登録を行う必要があります。本登録の際に必要な事項に関しては2008-2010年の平均である1433tで判断されることになります。
この事例はEU域内で年間1000t以上製造している企業の場合ですが、今回のご質問の事例の参考になります。
ご質問のビスフェノールAに関してはEU加盟国が制限物質として提出する意図のある物質を記載している「Registry of Intention(意図の登録)」にも収載されています。提案元はCLP規則の改定と同じフランスで、制限の内容は感熱紙に使用する場合です。リストには提案する付属書XVに定められた報告書の提出予定日が記載されており、ビスフェノールAの場合2014年1月17日となっています。
提出された報告書に対しては6カ月の間意見が募集され、並行してリスク評価専門家委員会(RAC)で9カ月以内、社会経済分析専門家委員会(SEAC)では12カ月以内の検討が行われます。SEACの社会経済的影響の意見は欧州化学品庁(ECHA)から公表され、60日間の意見が募集されます。
上記検討結果州委員会に報告されてから、3カ月以内に欧州委員会で附属書XVIIへの収載案を作成し、コミトロジー手続きを経て、欧州議会、理事会合意を得て、官報(Official Journal of the European Union)に公示されます。
制限物質リストに収載されると感熱紙に使用する目的でのEU域内での製造・輸入が禁止されますので注意が必要です。