EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
REACH規則第126条により、EU加盟国はREACH規則不順守に対する罰則規定を定めています。規則に違反した場合、あるいは他者に対してそのような原因をもたらしたり容認したりすると法令違反となります。
成形品に含有するSVHCの情報伝達については、「成形品に含まれるSVHCが重量比0.1%超の場合、いかなる供給者も、消費者の求めに応じ、供給者に利用可能ならば、成形品の安全使用を認めるのに十分な情報(少なくとも物質名を含む)を、消費者の求めを受けてから45日以内に、無償で関連する情報を提供しなければならない」とされています。
個人消費者からの要求は少ないかもしれませんが、消費者団体、環境保護団体などからの要求が考えられます。広範囲な消費者が対象であり、適切な対応をしないと大きな影響を受け、最悪の場合には企業活動にも影響がある恐れがあります。
REACH規則前文第86文節では、「人の健康及び環境保護のために適切なリスク管理措置を特定するのは成形品の製造者、輸入者、川下使用者の責任」と理念をしているように、伝達義務のある者はEU域内の成形品の製造者、輸入者などです。
不順守のとき日本国内の製造者が直接罰せられるのではなく、貴社(セットメーカーであれば)の輸出先(現地法人や代理店など)が罰せられる恐れがあります。輸出先が迅速に対応できるように、貴社は成形品を安全に使用するために必要なSDSなどの情報を入手して、輸出先などに伝達しなければなりません。
第33条は、candidate list に収載されれば即日適用されます。45日以内に安全措置に関する情報を提供するためには、収載される前から自社の成形品について、該当物質の含有量を特定しておかなければ短期間での情報提供は困難と思われます。 従って、SVHCに決定される検討段階からREACH規則の情報を継続的に把握していることが肝要と思われます。
SVHCは年2回追加されることになっており、次のような手順で公開されます。
EU加盟国などにより将来SVHCとして管理すべきであると考える物質が提案され、「SVHC準備リスト」が公開されます。それを受けて化学品庁(ECHA)から、コンサルテーションのための「SVHC提案リスト」が公開されます。その後SVHCとして確定されると「candidate list」に収載されます1)。
この決定過程には相当の期間を要しますので、これらの情報を早くキャッチし、「candidate list」に収載される時点までには自社の成形品の含有の有無について把握しておくことが賢明と思われます。
そのためにセットメーカーは、SVHC提案情報を確認した時点で製品特性および調達先の信頼性を考慮し、含有の恐れが想定されるときはサプライチェーンに情報提供を求めることが考えられます。
それに応じてサプライチェーンを構成する部品メーカーが自社製品について情報提供し、サプライチェーンが一体で対応することが必要と思われます。