EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
REACH規則附属書XVIIは、必ずしも全面禁止ではないが特定の使用方法を禁止する規定のなされている制限物質に関するリストで、同規則第67条ではこの制限の条件に適合していない場合には製造、上市、又は使用してはならないとされています。
REACH規則は制定以来何回かの改定を経てきていますが、ご質問の附属書XVIIのエントリー20で規定されている有機スズ化合物の制限については、委員会規則(EU)No.276/2010(2010年3月31日)による改定によるものが現時点での最新版です。
これによると現時点での「製品(以下成形品と記述)またはその一部」(articles or part therof)に係る部分は以下のとおりです。
1.三置換有機スズ化合物
トリブチルスズ(TBT)、トリフェニルスズ(TPT)の様な三置換有機スズ化合物は成形品或いはその一部においてスズの重量比で0.1%を超えて含有している成形品には使用してはならず、また2010/7/1以前に共同体において既に使用されている成形品を除き上市してはならない。
2.ジブチルスズ化合物(DBT)
DBTは混合物、成形品或いはその一部においてスズの重量比で0.1%を超えて含有している場合、一般公衆向けに供給される混合物或いは成形品に使用してはならず、また2012/1/1以前に共同体にて使用されている成形品を除き上市してはならない。
但し特例によりこれらは「食品接触材および製品に関する規則(EC No. 1935/2004)」の下にある物質及び成形品には適用しない。
3.ジオクチルスズ化合物(DOT)
DOTは成形品或いはその一部においてスズの重量比で0.1%を超えて含有している場合、公衆向けに供給或いは彼らによる使用のためには以下の成形品には使用してはならず、また2012/1/1以前に既に共同体にて使用されているものを除き上市してはならない。
以上の様に有機スズ化合物の制限物質として禁止される用途は成形品本体に含まれる場合の他、その塗装膜、被覆、シーリング剤等への使用があります。
ここでご質問の「成形品の一部」については、現在2つの解釈があるのが実態です。
すなわち成形品とは、それが単一の成形品ではなく、それらを構成する部品もまた成形品である様な複合成形品である場合もあります。例えば機械装置を構成するネジ等がこれに該当します。
また単一の成形品であってもその成形品を構成し、それ自身は成形品ではないが、切断、破砕、研磨の様な物理的手段によって分離可能である部分(均質物質)がある場合があります。例えば前記の成形品の塗装膜、被覆、シーリング剤等がこれに相当します。
現在自動車業界では、「成形品の一部」とは、複合成形品においてそれを構成する個々の部品である成形品を指すものと解釈しています。この場合、例えば成形品を構成する部品が有機スズ化合物を含む塗膜を有している場合、その部品が成形品の一部と解釈され、有機スズ化合物のスズの濃度は当該部品の全重量を分母とした濃度になります。
一方、一部の電気電子業界では成形品を構成している均質材料を指すものとして解釈しており、これによれば前記部品の塗膜が成形品の一部であり、スズの濃度とはその塗装膜の重量を分母とした濃度になります。
(参考)
FAQ「IMDS におけるジブチルスズ(DBT) 化合物およびジオクチルスズ(DOT) 化合物の扱い」 (日本語参考訳)