EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
REACH規則では成形品の製造者および輸入者に以下のような義務が課せられており、該当する場合はそれらの義務の履行が求められます。
ご質問の内容から考えますと、上記の成形品の製造者、輸入者に対する義務のなかで1.の意図的放出物質の含有は除外していいと判断いたします。 したがい、考慮するポイントは、SVHCの含有に絞られます。
印刷用インクは、顔料、樹脂、溶剤の混合物です。インキ中の溶剤は揮発性の有機化合物で、印刷時および製函時には揮発して箱(成形品)への残留の可能性は考えられません。 しかし、顔料や、樹脂は固化した状態で成形品の箱に残っていますし、段ボール箱の組立工程に使用される貼合糊の残渣等の検討が必要です。
全国段ボール工業組合連合会の「輸送包装ガイダンス~包装材に関わる含有化学物質管理~」(1)には以下のコメントがあります。
段ボール:製函工程
・印刷
- ― 段ボール印刷用インキの殆どは水性フレキソインキであり、インキについては含有化学物質の確認が必要であるためSDSおよびMSDSplusを入手し確認する。入手が困難な場合は印刷インキ工業会で策定したネガティブリストへの適合状況を参考にして確認する。
段ボール:貼合工程
- ― 貼合糊により波形に成形した中しんとライナを貼り合せ、段ボールシートとする。
- ― 貼合糊の固形分はデンプン(多くはコーンスターチ)が主成分で、水酸化ナトリウムおよびREACHの高懸念物質(SVHC)であるホウ砂またはホウ酸が使用されている。
- ― ホウ酸は貼合糊中では、水酸化ナトリウムと反応してホウ砂となる。
- ― ホウ砂は架橋反応でデンプンと反応すると考えられるが、固化した貼合糊中にホウ砂として残存しているかは不明である。
- ― 一般的な組成で調合された貼合糊においてホウ砂がすべて残留していると仮定しても、その含有量は段ボールシートに対しては最大でも0.05wt%程度と見積もられ、0.1wt%を十分に下回ると想定される。
- ― 但し、貼合糊の組成データに基づいて、最大の含有濃度を確認しておくことを推奨する。
印刷インク中の有機溶剤の残留や貼合糊中のSVHCであるホウ砂の残留については上記のとおりですが、川下企業からの情報要求に備え、顔料や樹脂に含有規制対象となる化学物質が含まれているかどうか等を確認しておかれることをおすすめします。