ここが知りたいREACH規則

ここが知りたいREACH規則

EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介

Q
2017年5月26日更新
Q.500 REACH規則に関する3つの規制対象物質リストについて、概要とその変更に対して日本の化学物質情報伝達スキームであるJAMPやchemSHERPAではどのように対応しているのか教えてください。

(1)3つの規制対象物質リストの概要について

 (a)認可対象候補物質リスト(Candidate List of Substances of Very High Concern;SVHC)1)

人の健康および環境に対して非常に高い懸念を抱かせる物質は欧州委員会の提案を受けたEU加盟国および欧州化学品庁(ECHA)より提案されたのち、90日間のパブリックコンサルテーションが行われることになります。意見が提出されなかった場合には、認可対象候補物質リストに収載されます。意見が提出された場合は、提案書と共に加盟国委員会(MSC)に送付されます。全会一致の合意が得られなかった場合は、欧州委員会に送られ検討されます。収載された物質には、成形品中の物質の届出義務および安全に使用するための情報提供等の義務が発生します。

 (b)認可対象物質リスト(Authorisation List)2)

認可対象候補物質リストに収載された物質のうちECHAが優先して規制すべきと判断した物質はECHAより欧州委員会に勧告され、欧州委員会にて承認された場合に認可物質として特定され、認可対象物質リスト附属書XIV(Authorisation List)に収載されます。認可物質として特定されると認可された用途以外には使用することができません。なお、日本からEUに輸出する認可対象物質を含有する成形品については、認可の対象ではありません。

 (c)制限物質リスト(Restricted Substance List)3)

人の健康および環境に対して許容できないリスクを持つ物質に対して、欧州委員会の要求にもとづき加盟国が欧州全体で制限することが妥当であると判断した場合に提案を行います。提案に対してリスク評価専門委員会および社会経済分析委員会の意見をもとに欧州委員会が妥当であると決定した場合に制限物質として特定され、附属書XVIIの制限物質リスト (Restricted Substance List)に収載されます。収載された場合にはリストで記載された条件での販売や使用が制限されます。

(2)日本の化学物質情報伝達スキームの対規制対象物質リスト改版対応について

最近は情報伝達スキームの共通化の動きが進んでいて、日本では情報伝達スキームには従来のJAMPと最近構築された海外を含めたサプライチェーン全体の情報伝達を目的とするchemSHERPAが存在しています。chemSHERPAは化学物質情報を電子データ化するフォーマットに国際規格であるIEC62474のXMLスキーマを採用するなど国際化の推進が図られています。

 (a)JAMP

上記3つの規制対象物質リストの変更ついてはJAMPの管理対象物質リストの改訂という形で対応しています。JAMP管理対象物質を選定する際の基準となる法規制および業界水準を記号(例;CLP規則(CMR):EU03、REACH規則附属書XVII:EU04、REACH規則SVHC :EU05)で管理し、改訂の際の最新の内容が反映されます。管理対象物質リストは、情報伝達シートであるAISやMSDSplusのパッケージに含まれていて、最新版をダウンロードすることでリストの最新版の内容が自動的に適用されます。

 (b)chemSFERPA

chemSHERPAでは管理対象物質リストを年2回改訂し、上記3件の規制対象物質リストの変更対応を予定しています。JAMPと同じく対象とする法規制および業界標準を管理対象基準ID(例;SVHC&認可対象物質:LR06、REACH規則附属書XVII:LR07)で管理しています。管理対象物質リストは報伝達シートであるCIやAIの作成支援ツールに含まれていて、最新版数をダウンロードすることでリストの最新版の内容が自動的に適用されます。

参考資料
1)https://echa.europa.eu/candidate-list-table
2)https://echa.europa.eu/addressing-chemicals-of-concern/authorisation/recommendation-for-inclusion-in-the-authorisation-list/authorisation-list
3)https://echa.europa.eu/addressing-chemicals-of-concern/restrictions/substances-restricted-under-reach

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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