EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
EU域外の製造者は、自社製品である化学物質をEU域内に輸出するために、REACH規則で義務付けられている登録などの対応をする必要がありますが、登録などの手続きは、EU域外の企業はできませんので、EU域内の輸入者がその義務を負うことになっています。
しかし一般的な輸入者はREACH規則が要求する登録時の情報や、当局からの問い合わせ等へのレスポンスをするための技術的知識が少ないことが多いと思われます。このため、EU域外の製造業者は、登録に限らずREACH規則の義務などを順守の代理をさせることも可能な、REACH規則第8条で規定されている「唯一の代理人」と契約することも選択できることになっています。
したがって、貴社が唯一の代理人を指名するか否かにより、手続き方法が違いますので、それぞれのケースに分けて説明します。
貴社が、唯一の代理人を指名し、その唯一の代理人が貴社の物質Aを登録しますと、貴社の物質Aを取扱うEU域内のすべての輸出先が唯一の代理人の川下ユーザーとなり、個々の輸入者においては登録の義務はありません。
ただし、この場合、各輸入者には、唯一の代理人を指名したことを通知する必要があります。また、唯一の代理人は、輸入数量、販売顧客に関する情報、安全データシートの更新版の提供に関する情報を利用できるようにしていることが求められています。
また、日本と中国からEU域内に輸出する同一化学物質の登録トン数は、これ両方の国から輸出するトン数の合計になります。
中国から化学物質をEU域内に輸出する際に起用する輸入者が、日本から同製品を輸出する際に使っている輸入者と同一で、その化学物質をその輸入者が登録している場合には、EU域内のサプライチェーンは同一となりますので、改めて登録する必要はありません。しかし、中国から輸出したことによりREACH規則第22条(登録者の追加の義務)で規定されている、用途の変更または追加、トン数帯域の変更などがある場合には、登録を更新する義務が発生します。
一方、中国から同製品をEU域内に輸出する際に起用する輸入者が、日本から同製品を輸出する際に登録者として使っている輸入者と違う場合は、EU域内でのサプライチェーンは同じとは見なされません。したがって、中国から貴社製品を輸出する際には、その輸入者が貴社の物質Aを登録する必要があります。
なお、唯一の代理人を指名することによって、貴社のようなEU域外の製造者は登録プロセス全体を管理することが容易になり、企業秘密など情報を輸入者に開示することが避けられるメリットがあります。また、EU の輸入者にとっても川下使用者とみなされるため、REACH規則における登録者としての義務から解放されるメリットもあります。
しかし、輸入者は税関当局が使用する書類に荷受人として記載され、税関の取り扱いは輸入者で行われます。登録義務は唯一の代理人ですが、一方で輸入業務の現場においては、輸入者はその唯一の代理人の川下のユーザーであることを執行当局に証明することができなければなりません。