EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
REACH規則では化学物質のリスク管理を確実に行うことを目的として、EU域内で年間1トン以上製造・輸入される物質の登録を原則的に義務化しています。また登録に加えて、以下に該当する場合には製造・輸入量等によって段階的に、SDS(安全性データシート)、暴露シナリオ、化学物質安全性レポートを用いて情報伝達を行うことも義務となります。
一方、本来の性質から最小限のリスクしかないとされる物質などはREACH規則第2条7項により登録義務が免除されており、附属書IVとしてまとめられています。今回のご質問にありますセルロースパルプ(EINECS番号:265-995-8、CAS番号:65996-61-4)は、天然材料である木片を蒸解したものでありリスクは最小限であるとされ、当付属書に収載されている物質です。登録の必要がないということは、当該物質の供給者である貴社サプライヤーには、貴社に対する情報伝達の義務もないということになります。詳細はECHAのファクトシート(ECHA-12-FS-07-EN)をご参照ください。
しかし、REACH規則の精神を表した前文には「物質のリスク管理に対する製造者又は輸入者の責任の一部には、川下使用者又は流通業者のような他の職業人への物質に関する情報の伝達がある(同56)」「適切なリスク管理措置を特定することは、製造者、輸入者及び川下使用者の責任であるべきである(同86)」とあります。セルロースパルプは、最少限のリスクしかない物質として附属書IVに収載されているもののその工程中で他の物質や混合物が加えられる可能性もあり、丁寧な説明が求められるケースであると考えます。
また、貴社はそのセルロースパルプを原料として「電子機器に使用される紙=成形品」を製造されています。成形品は、REACH規則第33条においてCL物質を重量比0.1wt%を超えて含有する場合には川下事業者および消費者の求めに応じ、少なくとも物質名を含む成形品の安全使用を認めるに十分な情報伝達を行うことが義務とされています。貴社の工程で使用される他の物質に対する調査を行い、川下事業者および消費者への情報伝達を行う義務と責任があることをご留意ください。