電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2008.06.13
EUの化学物質規制政策は、1992年のアジェンダ21に源を発し、2002年のヨハネスブルクサミット、SAICM(Strategic Approach to International Chemicals Management:国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ)やHPVC(High Production Volume Chemicals:高生産量化学物質)点検プログラムで順次具体化されています。
この潮流中での政策展開のベースとなる「化学物質政策白書」(2001年2月13日)で、既存物質管理の重要性、川上川下の双方向の情報交換やEU化学品業界の競争力・開発力を強化するための登録トン数帯の引き上げなどが示されています。REACH規則の前文の第4文節、第6文節でこの関係が示されて、条項の中で具体化されています。HPVC点検プログラムでリスクが低いとされて大量に生産されるものも見直しがされていますが、REACH規則の第44条の物質評価のローリングアクションプランが同主旨の運用となります。
2008年1月に新玩具指令の提案、5月に新電池指令の提案、RoHS指令も9物質の新規除外の検討が進められ、さらにRoHS指令による含有制限とPOPs(Persistent Organic Pollutants:残留性有機汚染物質)との関連も課題となっています。この最近の動向もEU化学物質政策の潮流の中にあります。
総論としてはこの大きな流れは理解できるところですが、現実となると戸惑いが広がります。電気・電子機器メーカー(REACH規則による成形品メーカー)は、これまでRoHS指令対応を精力的に実施してきました。RoHS指令への対応ができていれば、REACH規則のSVHC対応(届出義務)になるかなど、化学物質メーカーから離れている企業ほど悩むところです。
REACH規則のSVHCの届出とRoHS指令の含有制限は似ているのですが、違いもあります。RoHS指令では、鉛は均質物質で0.1wt%が最大許容濃度になっています。REACH規則でSVHC候補リストに記載された物質は、成形品中で濃度が0.1wt%を超えれば届出義務が生じます。RoHS指令では鉛、水銀、カドミウムは元素規制ですが、REACH規則は化学物質の規制になります。
例えば、Lead diacetate(CAS No 301-04-2)、構造式(CH3COO)2Pbは生殖毒性物質で、REACH規則の付属書XVIIの付録にも記載されています。
事例として、部品(成形品)中の均質物質部位の蛍光X線分析結果を800ppm(0.08wt%)とし、均質物質部位は部品全体の10wt%とします。REACH規則のRIP3.8(2008年5月)では、異論も示されていますが、成形品中となりますので、部品中では125.6ppmとなります。届出不要の濃度になります。
REACH規則でもフランスやドイツが主張するように最小単位の成形品、均質物質が対象となると届出対象となります。
このように、規制内容の基本は同じでも、各論となると違ってきます。規制内容を詳細に把握して対応することが肝要です。
(松浦 徹也)