電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2008.06.06
2008年5月24日のOJ(EU官報)に従来から提案されていました3項目のRoHS除外項目が公表されました。これにより現時点でのRoHS除外項目は32項目となります。
ただし、32項目中のDecaBDE in polymeric applications(ポリマー用途中のDeca-BDE)は、デンマークから除外決定無効の提訴がなされ、EU司法裁判所により、2008年4月1 日に除外決定無効の判決が出されています〔この判決によって、2008年7月1日以降Deca-BDEは含有制限 (0.1wt%)対象となります〕。
なお、Deca BDEの除外決定の無効判決および関連情報については、2008年4月11日付けコラム「EU RoHS指令 Deca BDEの除外決定の無効判決が出ました!」および2008年5月23日付けコラム「Deca-BDEの除外決定の無効判決(続き)」に詳細が述べられていますのでご参照ください。新しく除外が公表された項目は以下のものです。すなわち、ある種の材料やコンポーネントに含まれる鉛およびカドミウムは技術的に代替が困難であることによって除外が要求され、手続を踏んで除外が決定されました。
30 | Cadmium alloys as electrical/mechanical solder joints to electrical conducers located directly on the voice coil in transducers used in high-powered loudspeaker with sound pressure levels of 100 dB(A)and more | 100dB(A)以上の音声出力のハイパワーラウドスピーカーに使用されるトランスデューサー中のボイスコイルに直接電気的に設置されるコンデューサーを結合するための電気的および機械的はんだとしてのカドミウム合金 |
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31 | Lead in soldering materials in mercury free flat fluorescent lamps (which e.g. are used for liquid crystal displays , design or industrial lighting ) | 水銀フリーの直蛍光灯中の溶接材に含まれる鉛(液晶ディスプレイや設計または産業用照明に使用されている) |
32 | Lead oxide in seal frit making windows assemblies for Argon and Krypton laser tubes ) | アルゴンおよびとクリブトン管のウィンドウアッセンブリを形成するシールフリット中の酸化鉛 |
新しく公表された3項目は、2005年に除外の要求がなされていたものです。それが、2007年10月にTACで採択され、2008年1月24日に委員会決定されたものです。これが上記のとおり5月24日にようやく官報で公表されました。
除外要求から決定、公表まで数年の長期間を要しています。
その理由として、以下のことが考えられます。従来は、TACで決定されると欧州委員会が主催する専門家会合(コミトロジー委員会)で実施措置令に関する議論と決定が行われ、そこで決まった措置令は形式的に議会に諮問され、決定されていました。
これに関し、欧州議会が実質的な決定過程に関与できないことに強い不満を表明しコミトロジー・フロセス改革について、欧州委員会、欧州理事会などと協議を行った結果、決定プロセスの改革が行われ、2006年以降は、欧州議会での審議期間が従来の1ヵ月から3ヵ月(特に複雑なものの場合は4ヵ月)に延長され、欧州議会での絶対過半数によるコミトロジー委員会が採択した実施措置令案が否決可能となりました。
このような決定手続の改革の経緯を踏まえ、今回のRoHS適用除外3項目の要求から公表までそれなりの期間を要したものと思われます。
(瀧山 森雄)