電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2009.12.11
昨年、欧州委員会からRoHS指令、WEEE指令の改正提案が発表され、2008年12月19日付けコラムでも紹介しました。その後、理事会、欧州議会で提案の検討が続けられています。公開されている改正提案に対する理事会、欧州議会の修正草案では、対象製品、禁止物質の修正案が出されています。今回はその紹介をします。
1.対象製品
2008年に出されました欧州委員会の改正提案では、現行のWEEE指令の附属書IA、IBで対象製品が特定され、RoHS指令ではWEEE指令のIAのカテゴリー8、9を除いた8製品群を対象としています。改正提案では、提案RoHS指令の附属書Iで、前記の現行WEEE指令の10製品群を特定し、附属書IIで拘束力のある製品リストを挙げています。また、提案WEEE指令の対象製品は、提案RoHS指令を引用する形式を取っています。
改正提案に対する理事会の修正案では、WEEE指令に関しては現行の形式に戻しています1)。RoHS指令に関しては、除外される製品を第2条に明示して、すべての電気・電子機器を対象としています2)。欧州委員会の改正提案の附属書I、IIは削除となっています。他方、欧州議会のラポーターの草案3)では、附属書Iに、11番目として、「10製品群以外の電気・電子機器」が追加されています(適用は2014年6月以降)。附属書Iのカテゴリーには、ケーブル、消耗品、アクセサリーも含まれています(第2条)。
2.禁止物質
理事会の修正案では、禁止物質は現行と同じ6物質が附属書IVにリストされています。ただし、欧州委員会の改正提案では、評価する物質とされていたHBCDD、DEHP、BBP、およびDBPに関しては特に注意を払い、REACH規則の附属書XIVに掲載される物質の使用から生じるヒトの健康と環境へのリスクを優先的に考慮すべきとする文言を前文に記載するという脚注が4条7項に付けられています2)。
他方、欧州議会のラポーターの草案3)では、現行6物質が附属書IVのPart Aに、新たに以下の物質がPart Bに禁止物質として追加されています。
臭素系難燃剤
塩素系難燃剤
ポリ塩化ビニル(PVC)
塩素系可塑剤
DEHP(フタル酸ジエチルヘキシル)
BBP(フタル酸ブチルベンジル)
DBP(フタル酸ジブチル)
以上の7物質の最高許容濃度は均質物質当たり0.1%です。
また、禁止物質の見直し条項は、提案の4条7項を6条a)項とし、特に附属書IIIに掲載する物質に関して検討するとしています。
砒素化合物
ベリリウムとその化合物
三酸化アンチモン
三酸化二ニッケル(Dinickeltrioxide)
ビスフェノールA
臭素系難燃剤以外の有機臭素化合物
塩素系難燃剤または塩素系可塑剤以外の有機塩素化合物
REACH規則の認可対象候補物質(SVHC)や附属書XIVにリストされる認可対象物質を考えた上でのリストアップにも感じられます。これから理事会、欧州議会で審議が重ねられて禁止物質がどのように決まるか予想できませんが、REACHの動向も含めて注意深く見ていく必要があることだけは確かなようです。
なお、理事会の審議は今年末に開催。欧州議会では委員会の審議・採決を経て、2010年に本会議での採決が予定されているようです。
1)http://register.consilium.europa.eu/pdf/en/09/st12/st12848.en09.pdf
2)http://register.consilium.europa.eu/pdf/en/09/st13/st13837.en09.pdf
3)http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?type=COMPARL&mode=XML&language=EN&reference=PE430.424
(林 譲)