電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2010.11.26
廃電気電子機器の収集とリサイクルを促進するEU法令(Directive 2002/96/EC)が2003年2月13日にEU官報に掲載され、発効されました。これに従って、加盟国は発効から18カ月後の2004年8月13日までに国内法への導入を義務付けられました。法令は、消費者が使用済み電気電子機器を無償で返却するような回収スキームの創設を規定しています。このスキームの目的は、廃電気電子機器のリサイクルおよび(または)リユースを促進することにあります。
EU委員会は、2010年10月28日にスロバキアに対し、廃電気電子指令(Directive 2002/96/EC)実施の改善要求を行っています1)。
同国の現行の法令には、特に電子機器と携帯電話の回路基板の回収施設に多くの欠陥が含まれているということがその理由です。
EU委員会は既に、2008年にもスロバキアに同国の国内転換法が廃電気電子指令に適切に従っていないことを警告していました。警告に従い、スロバキアは法令の修正を行っていたのですが、依然として不備が残っているということで、今回、委員会はreasoned opinion(熟度した意見)を送付しています。このことは、スロバキアが2カ月以内にその意見に従うことが求められていることを意味します。もし満足できる対応が得られない場合、委員会は欧州裁判所に本件を付託することも可能です。
WEEE指令では、加盟国に対し廃電気電子機器の解体、リカバリ、リユース、リサイクリングを容易にするような電気電子機器の設計と生産を促進するように規定しています。
目的は、電気電子機器を分離回収することによって、分離されないままで廃棄物として処分される廃電気電子機器(WEEE)を最小化することにあります。生産者は一般世帯以外からの廃電気電子機器収集の準備をしなければならず、加盟国は収集されたすべての廃電気電子機器が認可された処理施設に運搬されることを確実にしなければなりません。
以下に、加盟国がEU法の国内法への転換に際し、適合できない場合のEU委員会の対処について記します。
各加盟国は、自身の法令システムにおいてEU法の実施 (特定された期限以前に実施措置、適合性および適正なアプリケーションの採用)に対する責任があります。
条約〔欧州連合のファンクショニングに関する条約(TFEU)258条:ユーロアトム条約141条〕の下では、欧州共同体の委員会はEU法が正しく適用されていることを確実にすることに責任があります。もし加盟国がEU法に従うことができない場合、委員会は加盟国が違反を終わらせるように仕向ける権力を持っており、必要な場合は非順法に対する行為を欧州裁判所に付託することも可能です。
委員会は告訴あるいは自身が見出した違反の徴候に応じて適当と思うあらゆる行動をとります。非順法とは、加盟国がEU法令に基づいた義務の遂行ができないことを意味しています。用語 State is taken toとは、順法責任が帰せられる中央、地域、地区等の当局には関わりなく、EU法に違反している加盟国を意味します。
委員会により開始される非順法手続きにおける、第1フェーズはthe pre litigation administrative phase (訴訟前行政フェーズ)で、infringement proceeding (違反処分) ともいわれています。the pre litigationステージの目的は、加盟国に条約の要求に自発的に従うことを可能にすることができる段階です。
infringement proceeding(違反処分)にはいくつかの公式な段階があります。委員会はinfringement proceeding(違反処分)が告訴にまで進展するとき、最初に調査を実行しなければなりません。
the letter of formal notice (公式の警告文書) はthe pre litigation administrative phase(訴訟前行政フェーズ) の最初の段階の指摘をします。委員会はこの期間に加盟国に対し、与えられた期限内にEU法の適用に関する特定された問題について所見を提出するよう加盟国に要求します。
reasoned opinion (熟慮された意見) の目的は、加盟国に対し、与えられた期限内に従うことを要求するため違反についての委員会の見解を提示し、行動の主要な事項を決定することにあります。reasoned opinion(熟慮された意見)はthe letter of formal notice(公式の警告文書)に基づき、関連する加盟国が条約または第二次法令の1つもしくはそれ以上の義務の遂行ができなかったことを結論づけた理由について首尾一貫し、詳細な声明を提供しなければなりません。委員会による裁判所への付託により訴訟手順を開始します。これに関して、委員会は確立している裁判所の裁判法に従い、違反処分を始めるかまたは裁判所に付託するかを決定するための自由裁量の力を持っていることを指摘しなければなりません。裁判所も同様に行動を開始するとき、委員会の自由裁量での決定権を認めています。
2)http://ec.europa.eu/community_law/infringements/infringements_en.htm#top
(瀧山 森雄)