電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2010.12.03
2010年11月22にEU議会本会議でRoHS指令改正案が提案され論議がされ、同月24日に採択されました。6月2日のEU議会環境委員会の改正案をベースとしていますが、理事会とのネゴシエーションの結果として、いくつかの妥協がされています。全体的には、産業界寄りになったイメージがあります。
RoHS指令改正案は、前文30文節、28条、附属書8およびステートメント1で構成されています。
附属書構成はつぎの通りです。
I 適用される電気・電子機器のカテゴリー
II 制限物質と均質材料中の最大許容濃度
III すべての電気電子機器の制限の免除用途(32項目)
IV 医療機器および監視、制御機器の制限の免除用途(20項目)
V 第5条の用途の免除、免除の削除、免除の更新の手順
VI 適合宣言
VII 撤廃する指令
VIII 現行RoHS指令と修正指令の相関表
2008年12月EU委員会案の附属書II(対象製品リスト)は削除、2010年6月に採択された議会環境委員会案にあった附属書III(禁止候補物質)と附属書VIa(カテゴリXIの用途免除)も削除されています。
また、採択された修正案の附属書IIIは、医療機器および監視、制御機器を含むすべての電気・電子機器に適用されます。医療機器および監視、制御機器は附属書IIIと附属書IVの用途での免除があります。
直流1,500V以下、交流1,000V以下で稼働するすべての電気・電子機器です。
軍事用、宇宙用機器、大型固定工具、大型固定据付や能動型埋込医用機器などが除外されます。
医療機器の定義は指令93/42/EC(人間用医療機器)の定義による電気電子機器です。
ナノシルバーとカーボンナノチューブは削除されました。
Hexabromocyclododecane(HBCDD)、 Bis(2-ethylhexyl)phthalate(DEHP)、Butyl benzyl phthalate (BBP)、Dibutylphthalate(DBP)などの37物質が収載された禁止候補物質(EU委員会提案の附属書III)は削除されました。
加盟国は上市される電気電子機器、ケーブル(定格250V以下の電気差し込み口または2つ以上の電気・電子機器を接続する機能をもつ)、スペアパーツ(修理、再利用、機能のアップグレード用)は附属書IIに収載された物質を非含有とさせる。
(1)適用時期
医療機器 発効後 3年
監視、制御機器 発効後 3年
体外診断機器(in vitro medical devices) 発効後 5年
産業用監視、制御機器 発効後 6年
埋込型能動医療機器(心臓ペースメーカーなど)は適用製品から除外されています。
(2) 適用除外
以下でのケーブルおよびスペアパーツには適用しない。
(1)除外要件 附属書IIIおよびIVの特定用途の除外はREACH規則の環境と人の健康の保護を弱めるものではない。つぎの条件を満たす場合である。
除外の期間は、代替品の有用性と社会経済的影響を考慮し、潜在的悪影響も考慮する。
除外は総合的な影響をライフサイクルシンキング(Life-cycle thinking)の考えで適用する。
(2)有効期間 有効期間は、第1~第7および第10、第11カテゴリ製品は最大5年、第8および第9カテゴリ製品は最大7年とする。
(3)除外期間の更新
附属書IIIに記載された除外の更新は、より短い期間が指定されない限り、第1~第7および第10、第11カテゴリ製品は5年、第8および第9カテゴリ製品は7年とする。
更新の適用は除外期限の18カ月前までにする。
更新をしない場合は除外期限の6カ月前までに決定する。
更新の申請の拒絶、除外の削除は除外期限の前に決定し、最短12カ月、最大18カ月の
期間がある。
附属書II の見直しと修正は、REACH規則の附属書XIV(認可物質リスト)および附属書XVII(制限物質リスト)を考慮する。
EU委員会は、附属書II の見直しと修正では非常に小さいサイズ、内部または表面構造を含む物質または類似物質グループについて特別の考慮をとるものとする。
懸案のナノ物質と制限候補物質が削除されましたが、その背景をRoHS指令の理念を示す前文から読み取ります。
【HBCDD・DEHP・BBP・DBP(前文10)】
REACH規則の附属書XIV、XVIIを考慮し定期的に見直す。HBCDD・DEHP・BBP・DBPは優先して、人の健康と環境への危険を見なすべきである。
【ナノ物質(前文16)】
ナノマテリアル(very small size or internal or surface structure (nanomaterials))は他の物質制限と同様に科学的証拠、予防原則により、消費者保護の観点で代替を調べるべきである。特定有害物質(附属書II)のレビュー、修正は論理的であるべきであり、REACH規則との補完、相乗効果をあげるべきである。
ケーブルが対象となりHBCDD・DEHP・BBP・DBPなどが制限物質になると、PVCの制限につながる可能性があります。また、ナノ物質は、ISO/TC229でTS27687が審議されていますので、表示義務が具体化する可能性があります。
ナノ物質や優先評価物質が単に削除されたものではなく、今後の動きに注視する必要があるようです。
(松浦 徹也)