電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2013.05.31
2013年2月15日付きコラム、2013年4月19日付きコラムに続き、「RoHS(II)制限物質の見直し」のその後の状況について記述します。
欧州委員会が2013年5月7日にドラフト版方法論マニュアル(The draft methodology manual)をwebで公開し、併せて第3回ステークホルダーコンサルテーションが開始されています。利害関係者は2013年6月4日までにコメントを提出するよう要請されています。
以降にドラフト版方法論マニュアル(以下、ドラフトマニュアル)の概要を紹介します。
ドラフトマニュアルは、以下の7章で構成され目次を含むと全体が60ページになっています。
緒言(イントロダクション)の内容の概要を以下に記します。
(1)背景 (background)
EEEには有機、無機の多様な物質が含まれており、その中には人の健康、環境に有害な特性を持つ物質もあります。RoHS指令 (2002/95/EC) は鉛、水銀カドミウム、六価クロム、PBBおよびPBDEの6物質の使用を2006年から禁止/制限していました。さらに特定の製品に対しては、制限の除外が認められてきました。2008年にはさらによい規制環境を開発し、化学と技術の進歩を採用する条件を特定することを目的として、RoHS指令の再構築(Recast)が提案され、2011年7月にDirective 2011/65/EC(以下、RoHS2)として公布しています。再構築のもう1つの目的は、WEEEの管理に関わる作業員に焦点を当て人の健康と環境に対するリスクの予防です。そのためRoHSをREACHシステムのような化学物質法令やWEEE指令 (2012/19/EU) のようなWEEEの管理に関連する他のEU個別法令と調和させることも目的としています。
RoHS2は第6条において欧州委員会が第1回目の制限物質リストのレビュー (再検討)を2014年7月22日までに実施することを要求しています。
(それ以降は、欧州委員会の主導で定期的に行うか加盟国からの要求の提出にしたがって行うことが規定されています)
RoHS2第6条(1)によれば、有害物質のリストのレビューと修正は化学物質に関連する他の法令、特にREACHおよびその附属書XVIIおよびXIVとの一貫性が保たれるべきであることを規定しています。
RoHS2とREACHの適用範囲と目的は違います。RoHSはEEEに特定有害物質の含有制限を規定している分野別の指令であり、REACHは化学物質の登録、評価、認可および制限を含んだ管理システムを導入することにより物質それ自身、混合物または成形品中の物質を規制しています。
RoHS2附属書IIに包含する可能性のある物質評価を行う責任機関は欧州委員会です。
REACHの下では産業界は、上市された物質からはリスクが生じないことを立証しなければなりませが、一方、欧州委員会によるRoHS2の物質の制限はEEE中の物質の使用のリスクまたはEEEの廃棄管理期間に他の負の影響を生ずることを示すような評価に基づかなければなりません。
RoHS2は再構築(Recast)の準備期間中に制限物質リストの拡大が議論されました。 特にRoHS下での制限物質レビュー(Oeko-Institut、2008)は、制限に該当する有害物質がEEEに使用されていることを明らかにしています。
難燃材であるテトラブロモビフェニールA(TBBP-A)、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCDD)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、ブチルベンジルターフタレート(BBP)、ジブチルフタレート(DBP)が高優先物質として特定されていましたが、環境、経済社会影響、特に代替可能品に関するデータが十分でないため、制限物質のリストの拡大はRoHS2の第6条のレビューまで延期されました。
利用可能な新しい科学の証明により、特に以前の評価に提出された他の有害物質が制限物質リストに含まれるかどうかも調査することが必要です。
RoHS2の前文10はまた予防原則について言及しています。
このマニュアルに記載されている方法論では、予防原則は公正、一貫性、責任原則にしたがってコストと便益を考慮して適用されるべきですとしています。
(2)ドラフトマニュアルの目的
このドラフトマニュアルに記載されている方法論は、RoHS2の附属書IIの制限物質リストのレビューに対するガイダンスとして役立ちます。
(3)ドラフトマニュアルの適用範囲
このドラフトマニュアルに記載されている方法論は、委員会による附属書IIのレビューの規則を提供します。RoHS2においては、附属書IIの制限物質のレビューに以下の2つがトリガーとなります。
(4)方法論の概要
このドラフトマニュアルに記載されている方法論は以下の3つの主要部分から構成されます。
パートIは、EEE中の環境と作業員に対するリスクおよび資源管理に関する負の影響の観点から有害であるかも知れないすべての物質を特定するためのスクリーニング段階として扱っています。
既存データベースとコンピュータベースのツールがEEEに使用されている物質に関する包括的データベースを確立し、特定基準の製品(WEEE管理期間に問題を生ずる有害特性、証拠)による化学品の選択をするために使用されます。
物質に対して収集された情報は更なる評価と考慮のために使用されます。
パートIIは、a)有害特性、b)廃棄管理期間中のその他の問題、およびc)高使用量のため最も高い懸念があり、RoHSの下で最も緊急に詳細な評価を要求する物質を優先するために比較的簡単で素早い手続により廃棄物管理期間中に有害であるかもしれないEEE中に使用される物質のリストを絞り込むことを目的としています。
パートIIIの範囲内での焦点は、RoHS2第6条で規定されているような要求です。これら(要求)は、廃棄物管理オペレーションおよび特に資源管理に関する廃棄物管理に関する他の影響の結果の人の健康および/または環境に対するリスクに対するリスクです。
欧州委員会が制限物質のリストのレビューを主導する場合、上記方法論の3つのすべてパート(パート1、パート2およびパート3)が関連します。
一方、加盟国が要求を提出する場合は、予備評価(パート2)と詳細評価(パート3)のみが関連します(別添の方法論フロー図を参照ください)。
(瀧山 森雄)