電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2013.12.06
RoHS(II)指令への適合性確認はリスクを基本としますが、そのベースがデューディリジェンスであることは、理解しているものの具体的に対応をするときに戸惑いが生じます。
デューディリジェンスとは、「ある行為者の行為結果、責任をその行為者が法的に負うべきか負うべきでないかを決定する際に、その行為者がその行為に先んじて払ってしかるべき正当な注意義務及び努力のこと〔引用:ウィキペディア「デューディリジェンス」、2013年8月1日(木)〕」です。
RoHS(II)指令への適合性確認に「しかるべき正当な注意義務及び努力」として、何をするのかはEU域内企業でも迷いがあるようで、いくつものガイド文書が公開されています。
英国の執行当局(Enforcement Authority)であるNMOは、RoHS指令の法的要求事項への対応のために、すべての適正処置をとってすべての適切な注意を払う取組みをしたことの立証を求めています。「説明」の要旨をまとめますと、法的要求事項への対応は、取組みが成功するかどうかはそれぞれのケースを取り巻く状況によって異なりますので、デューディリジェンスの立証で無罪とされる権利が与えられます。結果も重要ながら、そのプロセスの順法の妥当性が問われることになります。
優れた実践ガイド(A good practice guide)として、法的要求事項への対応の参考となる管理点をご紹介します。
このRoHSガイダンスのなかで、生産者責任として次などを求めています。
確実な順法のためのすべての法的要求事項への適正措置を取るのは生産者が頼りとなります。
サプライヤー管理では、生産者は取引先との信頼レベルを確立することになります。あるサプライヤーからは、提供する材料の順守を示すドキュメントが生成されますが、他に意識レベルの低いサプライヤーがあり、必要な情報を生成することはできないことがありあす。極端なケースでは、順法を記載した偽造文書が与えられていることもあります。
信頼性の低いサプライヤーに対する第二者監査は、独立したテストを実施するよりコスト効果の高い方法となります。
コンプライアンスを確保するための現場での製造プロセスやシステムの点検は、供給者とプロデューサーの両方の認識を一致させるだけでなく、信頼性の高い関係を構築することができます。
日本では、ISO9001マネジメントシステムの第二者監査などでサプライヤー評価・指導をしている企業が多くあります。この第二者監査などの活用もデューディリジェンスの1つになります。
木材規則は、違法伐採木材の使用を禁止し、木材業者に購入元や販売先の届出を義務付ける規則で、化学物質規制ではないのですが、順法はやはりデューディリジェンスです1)。
前文17で「デューディリジェンスシステムには、情報へのアクセス、リスク評価および特定されたリスクの軽減のリスク管理特有の3つの要素が含まれる」としています。さらに、前文18で「本規則の定める要件に合致したシステムあるいは手順をすでに利用している事業者は、不必要な事務的負担を避けるために新たなシステムを立ち上げる必要はない」としています。
事業者が用いる必要のある手続きおよび対策の枠組みをデューディリジェンスシステムとして、第6条で次を求めています。
木材規則の監督官庁はデューディリジェンスシステムを管理し、定期的に評価し、事業者に対しその利用権を認めることが第8条で決められています。
木材規則のデューディリジェンスシステムは電子部品などの調達に置き換えるとRoHS(II)指令の取組みの参考になります。
整合規格EN50581によるRoHS(II)指令の順法(特定化学物質の非含有)確証として次を求めています。
EN50581には順法確証の収集の方法(How)は記載されていなく、生産者が決めることになります。生産者による「How」は「しかるべき正当な注意義務及び努力」(デューディリジェンス)が基本となります。RoHS(II)指令が求めるデューディリジェンスシステムは、NMOのガイドや説明にあるように、企業が運用している現状のマネジメントシステムをベースにして、RoHS(II)指令固有の要件を追加することになります。
可能であれば、木材規則に示されたように、デューディリジェンスシステム(マネジメントシステム)は、ISO9001マネジメントシステムのようなサーベイランスで運用の適格性のレビューを受けるのがよいようです。
一方、生産者としてのデューディリジェンスは、数値的な基準値はなく、リスクで決めることになります。リスク管理についてISO31000では「4.2 指令及びコミットメント(Mandate and commitment):リスク管理を導入し、常にその有効性を確実にするためには、組織の経営者の強力かつ持続的なコミットメントとともに、そのコミットメントをすべての階層で達成するための戦略的でかつ綿密な計画策定が要求される」として、経営者の取組みとしています。
担当者にリスク管理を任せると、「How」が重くなりがちです。デューディリジェンスは経営者自らの意志決定ともいえます。
(松浦 徹也)
1)http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2010:295:0023:0034:EN:PDF