電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2014.05.30
RoHS2にCEマーキング制度が導入され、これまでのコラムでもたびたび「CEマーキング」や「ニューアプローチ」、またニューアプローチに代わる「新たな法的枠組(New Legislative Framework:NLF)」などを取り上げています。
CEマーキングやニューアプローチについては、2000年に公表された「ニューアプローチ及びグローバルアプローチに基づく指令の実施に関するガイド」(通称「ブルーガイド」)が解説書として長年活用されてきました。内容を確認された読者も多いのではないでしょうか。
しかしながら、NLFが2010年に適用されたことから、ブルーガイドは有効ではあるものの、NLFへの対応が求められ、NLFに対応した解説書が検討されてきました。その結果、2014年4月に新たな解説書として「EU製品規則の実施に関するブルーガイド」が公表されました。
今回公表された「EU製品規則の実施に関するブルーガイド」は、後述のように10章で構成された全124ページの文書です。改訂は、ニューアプローチやグローバルアプローチからNLFへの対応が主ですが、「上市(Placing on the market)」のような基本的な事項にも一部変更が加えられています。
RoHS指令をはじめとする関連指令が適用される「上市(Placing on the market)」については、基本的には旧版と同様に「EU市場で最初に入手可能(making available)になった時」とされていますが、新版では、「輸入者」の関わりがより明確化されています。
上市について、旧版では、「製品の移送は、製造者または製造者のEU域内法定代理人から、EU域内輸入者またはEU市場に流通させる者の間で行われ、物理的な移転や所有権の移転のいずれかを伴う」とされ、「特別な法規制がなければ、製造者やEU域内法定代理人が保管している製品」は上市に該当しないものとされていました。
一方、新版では「製造者または輸入者が、流通業者または最終使用者に最初に行う供給が上市であり、2つ以上の法人または個人の間で所有権などの財産権の移転に関するオファーや契約が必要であり、物理的な移転は必要ない」と記載され、「特別な法規制がなければ、製造者または製造者のEU域内法定代理人、輸入者が保管している製品」は上市に該当しないとしています。
つまり、一般的に、上市は、製造者から輸入者への段階で生じるものではなく、輸入者が流通業者に出荷した段階であると明確になったといえ、輸入者が製造者や製造者のEU域内法定代理人と同様の位置づけになっているといえます。
RoHS指令や低電圧指令などをはじめとする関連指令の前提となっている「新たな法的枠組み(NLF)」を把握することは、関連指令の理解・対応を進めるうえで有用であると考えます。全体を読むには分量も多く、時間がかかりますが、目次を参考に、「上市する」や「利用可能にする」の定義を確認したければ、第2章を、共通的な技術文書や適合宣言書の要件などを確認したければ第4章を確認する等、必要かつ関心のある部分から読み進められてはいかがでしょうか。
1章:商品の自由流通に関する規制
2章:EUにおける調和された製品規制の適用範囲
3章:製品サプライチェーンの主体とその義務
4章:製品要件
5章:適合性評価
6章:認定
7章:市場監視
8章:EU域内における製品の自由流通
9章:製品に関するEU法規制の国際的側面
10章:附属書
(井上 晋一)