電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2016.07.22
2016年7月21日に有効期限切れとなるRoHS指令附属書IIIに収載された適用除外用途については、多くの電気電子製品で活用されているものもあります。そのため、RoHS指令の動向としては読者の関心が非常に高いものとなっています。
そのうち、早期に更新申請が提出された4種の適用除外用途に関する調査(パック7)については、2月に報告書が公表され、本コラム1)でも取り上げておりました。
残りの29種の適用除外用途に関する調査(パック9)については、2016年3月がプロジェクト完了し、報告書が公表される予定でしたが、結果として6月7日付けの報告書2)が6月27日に公表されました。
パック9が対象とした適用除外用途は29種と多量であったため、報告書は次の3分冊となっています。なお、各分冊ともに表1-1に全29種の適用除外用途の表現および有効期限を見直す勧告内容を示す一覧表が掲載されています。
報告書 | 対象の適用除外用途No |
---|---|
ランプに関する適用除外用途 | 1(a-e)、1(f)、2(a)(1-5)、2(b)(3)、2(b)(4)、3(a-c)、4(a)、4(b)(I-III)、4(c)(I-III)、4(e)、4(f)、18b) |
はんだおよび電気接点に関する適用除外用途 | 7(a)、7(c)-I、7(c)-II、7(c)-IV、8(b)、15、24、32、34、37 |
合金およびその他の適用除外用途 | 5(b)、6(a)、6(b)、6(c)、9、21、29 |
勧告内容を確認すると、更新申請が提出された適用除外用途は何らかの形で今後も適用除外用途として継続することとなっています。しかしながら、全体的に見ると多くの適用除外用途で次のような見直しが行われています。
これまでに「ここが知りたいRoHS指令」等でご質問を頂いていたいくつかの適用除外用途について見てみます。
鋼材および亜鉛めっき(6(a))、アルミニウム(6(b))、銅合金(6(c))については、次表のとおりです。
6(a)を見ると、カテゴリー8、9については従来通りの内容で適用開始から7年後まで延長されていますが、カテゴリー1~7、10では鋼材と亜鉛めっきが分離され、有効期限が3年および5年と個別に設定されています。報告書ではこの理由として、必要な機能を発揮するために意図的に鉛を添加する鋼材と、鉛を意図的に添加することがない亜鉛めっきは明確に区別することが必要であることが指摘されており、また鋼材については今回の調査では詳細な用途までは言及できないものの、将来的には鉛の意図的な添加が必要な用途に絞り込むことも検討する必要があるとし、見直し期限を3年としたことが示されています。
一方、6(c)はいずれの製品カテゴリーも、これまで通りの内容で延長されますが、製品カテゴリーによって期限が異なっています。この理由としては、一部用途では鉛フリー銅合金への代替が可能だが、一部用途では代替ができない等によって、すべての用途において代替が可能であると結論づけられないとし、現状のまま有効期限を延長するが、将来的にはより詳細な用途で検討を行うことが必要であるため、見直し期限を3年としたことが示されています。また、報告書では、銅合金中の鉛に関して、利害関係者の間で、将来的な代替化に向けた計画がないため、今後の見直しにおいては、利害関係者から代替化に向けた計画に基づく情報等の適用除外用途の更新を正当化する十分な情報が示されない場合には適用除外用途を廃止すべきであるとしています。
現状の附属書IIIの内容 | 勧告内容 | ||
---|---|---|---|
文言 | 終了または見直し期限 | ||
6(a) | 機械加工用途の鋼材および亜鉛めっき鋼中の、合金元素として重量比0.35%まで含まれる鉛 | I)機械加工用途の鋼材中の合金元素として重量比0.35%まで含まれる鉛 | カテゴリー1~7、10、11:2019年7月21日 |
II)ホットディップ溶融亜鉛めっき鋼中に重量比0.2%まで含まれる鉛 | カテゴリー1~7、10、11:2021年7月21日 | ||
III)機械加工用途の鋼材および亜鉛めっき鋼中の合金元素として重量比0.35%まで含まれる鉛 | カテゴリー8、9:2021年7月21日 ただし、体外診断用機器は2023年7月21日、産業用監視および制御機器は2024年7月21日 |
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6(b) | アルミニウムに合金元素として重量比0.4%まで含まれる鉛 | I)切削機械加工を伴わない部品製造で使用するアルミニウムに合金元素として重量比0.4%まで含まれる鉛 | カテゴリー1~7、10、11:2021年7月21日 |
II)機械加工で使用するアルミニウムに合金元素として重量比0.4%まで含まれる鉛 | カテゴリー1~11:2021年7月21日 | ||
III)アルミニウムに合金元素として重量比0.4%まで含まれる鉛 | カテゴリー8、9:2021年7月21日 ただし、体外診断用機器は2023年7月21日、産業用監視および制御機器は2024年7月21日 |
||
6(c) | 合金元素として鉛を重量比4%まで含む銅合金 | 合金元素として鉛を重量比4%まで含む銅合金 | カテゴリー1~7、10、11:2019年7月21日 カテゴリー8、9:2021年7月21日 ただし、体外診断用機器は2023年7月21日、産業用監視および制御機器は2024年7月21日 |
(筆者仮訳)
2016年7月21日に期限を迎えるRoHS指令附属書IIIの適用除外用途については、パック7およびパック9で検討され、今後の欧州委員会による改正案の作成や手続きに進むことになります。また、附属書IIIが正式に改正された後は、製品カテゴリー1~7、10については2019年までの短期間の延長となっているケースが多いため、2018年1月までに改めて更新申請を提出することが求められ、同様に調査プロジェクトが実施されることになります。
パック7、9の内容からも、全体として適用除外用途をできるだけ限定していく方向で見直しが行われていることがわかります。そのため、RoHS指令への対応として、多くの企業は、自社製品が該当する適用除外用途を把握しているかと思いますが、今後はより詳細な内容で適用除外用途を管理することも必要であると考えます。
(井上 晋一)
1)本コラム(2016年2月19日)
2)RoHS Evaluations of exemption requests and other topics