ここが知りたいRoHS指令

ここが知りたいRoHS指令

電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介

2017.01.27

RoHS(II)指令適用除外用途の見直し最終報告書

RoHS(II)指令は附属書IIに収載されている特定有害物質の電気電子機器への含有を規制した指令です。ただし例外的に一部の製品について特定有害物質の含有が認められ、附属書IIIおよびIVに収載されています。
 それらの特定有害物質の含有除外製品には、適用除外期限が定められており適用除外期限延長の見直しの必要があれば延長申請を除外期限の18ケ月前までに申請を行わねばなりません。
 今回のコラムでは、2015年12月19日にスタートした2つの鉛の除外製品の見直しプロジェクトPack111))の最終報告書の内容についてご紹介します。
 当該プロジェクトは欧州委員会からの委託によりOeko InstitutおよびFraunhofer Institut IZMにより2015年12月19日にスタートし9ケ月後の2016年9月18日に終了しています。最終報告書2)は2016年12月20日に公表されています。

対象となっていた特定有害物質含有除外の申請は下表のとおりです。

No 適用除外用途
2016-1 以下の業務用の非道路機器エンジンのベアリングとブッシュ中の鉛
  • 業務用で排気量が15リットル以上
  • 緊急時、スタンバイ時、ピークカット発電機等スタートから全負荷までの時間が10秒未満が要求される業務用非道路機器向けに設計された15リットル未満のエンジン
  • 建設現場、採石場、鉱山など劣悪な環境で動作するドリル、コンプレッサー、岩粉砕機、灌漑用ポンプ、タブグラインダー等の業務用非道路機器向けに設計された15リットル未満のエンジン
2016-2 ポリメラーゼ連鎖反応を用いた体外診断分析機器で使用されるペルチェサーマルサイクラーの組立てや接続に使用されるはんだ中の鉛

以下に報告書の内容ポイントについて記載します。

1. プロジェクトの背景 と目的(Background and objectives)

 RoHS(II)指令は科学と技術の進歩を附属書に採用するための様々な基準を詳述している。第5条(1)(a)は附属書III、IVの除外の追加を正当化するために考慮をしなければならない基準と結末を記述している。

  • 除外はREACH規則により提供される環境と健康の保護を弱めない場合に認められる。
  • 除外要求は、以下の3条件の1つに正当性が見出されなければならない。
    ―代替が科学的、技術的に実行できない。
    ―代替の信頼性が確実でない。
    ―環境、健康および消費者安全の負の影響が代替で得られる便益を上回る。

2. 重要所見(Key finding - Overview of the evaluation results)

 本プロジェクトでカバーされる除外要求および提案申請者、最終のリコメンデーションおよび除外期限を次表に示します。

除外要求No 要求除外内容 申請者 推奨文言 除外期限適用範囲
2016-1 以下の基準に適合する業務用途の非道路用機器のベアリングとブッシュ中の鉛
  • 総排気量15リットル以上の業務用途
  • 緊急時、スタンバイ発電機およびピークカット発電機で、スタート信号と全負荷間で10秒以下が要求されるよう設計されている非道路用の業務用途装置
  • 建設現場、採石場、鉱山等でのドリル、コンプレッサ、岩石粉砕機、灌漑用ポンプおよびタブグラインダーのような厳しく劣悪な環境で操作されるために設計されている業務用非道路向けの15リットル未満のエンジン
内燃機関エンジン製造者連合会 (EUROMOT) 以下に適用されるディーゼル又はガス燃料で駆動される内燃機関エンジンのベアリングおよびブッシュ中の鉛
  • 非道路業務用途装置で総排気量15リットル以上のエンジン
  • スタート信号と全負荷間で10秒以下を要求される場合のアプリケーションの操作のために設計されている総排気量15リットル以下の非道路業務用途装置エンジン
  • 鉱山、建設および農業用製品のような戸外環境において正規のメンテが実施される応用製品で操作されるために設計されている総排気量15リットル以下の非道路業務用途エンジン
カテゴリー11 : 5年間

指令の附属書III除外6cの除外にベアリングとブッシュ除外を追加する
2016-2 ポリメラ―ゼ連鎖反応を用いた体外診断分析用ペルチェサーマルサイクラーの組み立てと接続に使用されるはんだ中の鉛 Roche Diagnostics Ltd 除外要求は正当化されない

3. 除外要求2016-1に対する結論

RoHS(II)指令第5条(1)(a)は以下の基準の少なくとも1つが実現すれば除外が正当化されるとしている。

  • 設計変更や材料変更により附属書IIにリストされている材料、物質要求を削減、代替することが科学的、技術的に不可能
  • 代替品の信頼性が確実でない
  • 代替により生ずる環境、健康および消費者安全の総合的な負の影響が代替による環境、健康および消費者安全の総合的便益を上回る

コンサルタントの見解は、提供されている結果と情報から判断して、業務用途の非道路装置エンジンの適用領域では十分なレベルの信頼性は認められない。

4. 推奨(リコメンデーション)

現状では、鉛フリーのブッシュおよびベアリングは業務用途の非道路装置エンジンには適切なレベルの信頼性が乏しい。捕捉抵抗、快適性、据付性、瓦礫抵抗は本装置の操作およびサービス、メンテナンスの重要な役割となる。コンサルタントは除外の正当性を認める。以下の文言で除外要求の許可を推奨する。
 非道路業務用途装置に適用されるディーゼルまたはガス燃料の内燃機関のベアリングおよびブッシュ中の鉛:

  • 総排気量15リットル以上のエンジン
  • 総排気量15リットル以下のスタート信号と全負荷間が10秒以下を要求され、鉱山、建設および農業応用品のような厳しく劣悪な戸外環境で正規のメンテナンスが典型的に実行されるような製品の操作のために設計されたエンジン

5. 結論(2016-2)

状況的には要求されている鉛の除外の代替は科学的、技術的に実施可能であるが装置の徹底した設計変更を必要とする。制限物質の使用削減が可能ならば、RoHS(II)指令は、製造者に設計変更採用を要求する。(ここではRoche社のCTMおよびCTM48IVD PCRアナライザーシステムが対象)
 もし、要求が許可されれば、例え、それがRoche社のCTMおよびCTM48のみにおいて要求されていたとしても、除外はすべてのIVD PCR中のペルチェ素子に利用可能となる。装置の特性がユニーク、他の装置より科学技術的に優れている、もしくは健康、環境面で有利で、鉛はんだを使用しなければ実現できないということでなければ上記の2装置のみに除外範囲を限定することは、正当化できない。
 得られた情報からは、CTMおよびCTM48装置は徹底した再設計後、RoHS(II)指令の適合生産品となることを示唆している。
 レビュワーは、要求されている除外を許可することはRoHS(II)指令の条項に適合していないと結論する。

6. 推奨(2016-2)

除外は許可しない旨を推奨する。IVD PCR分析器中のペルチェサーマルサイクラーコネクタの建設および接続するために使用される鉛はんだの代替および削減は科学技術的に実行可能である。申請者およびコンペチターは、既にRoHS適合IVD PCR分析装置を上市している。RoHS(II)指令第5条(1)(a)の除外の基準に基づく除外の認可は正当化することができない。

1)http://rohs.exemptions.oeko.info/fileadmin/user_upload/RoHS_Pack_11/
RoHS_Ex_Project_Description_Pack11.pdf

2)http://rohs.exemptions.oeko.info/fileadmin/user_upload/reports/
RoHS_Pack-11_prelim_final_report_20161220_final.pdf

(瀧山 森雄)

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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