電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2018.06.15
掲題RoHS(II)指令(Directive 2011/65/EU:以降「RoHS(II)指令という」)附属書IIIの適用除外用途の見直し要求に対し、欧州委員会(以降「EC」という)は2018年5月18日に以下の7種の適用除外用途を改正する委員会委任指令(COMMISSION DELEGATED DIRECTIVE)を官報公示1)しました。
RoHS(II)指令附属書IIIの適用除外用途はそれぞれの除外用途ごとに除外期限が定められており、当該除外用途の見直し(新規用途の追加、期限延長、取下げなど)の要求があれば、RoHS(II)指令第5条および附属書Vに従い、除外期限の18カ月前までに見直し要求手続きを行うよう規定されています。
今回の決定(改正の官報公示)は産業界からの除外用途の見直し要求に基づいてECがPack 9として該当する適用除外要求についてOeko-InstitutおよびFraunhoher IMZに調査を委託し、その最終報告書2)に基づいてRoHS(II)指令第5条の科学と技術の進歩の適用の可能性を検討し、除外用途見直しを法案に反映させたものです。
今回の改正内容は2017年9月に世界貿易機関(WTO)にTBT通報されていたものが正式法令として官報公示されたものです。Pack 9は、RoHS(II)指令附属書IIIに収載されている適用除外用途のうち、除外期限が2016年7月21日となっていた29種が対象となっていたものです。最終報告書は2016年6月に公表されていましたが、それに対する業界団体などから提出された多様かつ多数な意見を吸収するため決定が遅れ、29種の適用除外用途の中の一部(7種)が今回の委員会委任指令の対象となっています。
WTOへのTBT通報内容は以下の(1)~(7)です。
ちなみに、TBT通報における適用除外用途および除外期限と今回公布された委員会委任指令のそれとの相違はありません。
以下に、7種の委員会委任指令の内容を紹介いたします。それぞれの委員会指令は、すべて鉛の含有に関連している適用除外用途について以下の観点から「科学と技術の進歩」に鑑みて適用除外用途の見直しを検討し、製品カテゴリーごとに除外期限を見つめています。
それぞれの委員会委任指令に対して加盟国は、2019年6月30日までに国内法への転換を行い、2019年7月1日から施行することを要求されています。
委員会委任指令 | 適用除外用途内容 | 適用対象および期間 |
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Commission Delegated Directive (EU) 2018/736 |
7(c)- I コンデンサ中の誘電セラミック以外のガラスまたはセラミック中に鉛を含む電気電子部品(圧電素子など)およびガラスまたはセラミックの化合物中に鉛を含む電気電子部品 |
カテゴリー1-7および10(34項でカバーされる製品は除く) 2021年7月21日まで カテゴリー8、9(体外診断医療装置、産業用監視制御機器を除く) 2021年7月21日まで カテゴリー8の体外診断医療装置 2023年7月21日まで カテゴリー9の産業用監視制御機器 2024年7月21日まで |
Commission Delegated Directive (EU) 2018/737 |
24 円盤状および平面状アレイセラミック多層コンデンサの機械加工スルーホールのはんだ付け用はんだ中の鉛 |
除外期限は以下 ・カテゴリー1-7および10は2021年7月21日 ・体外診断装置および産業用監視制御機器以外のカテゴリー8と9は2021年7月21日 ・カテゴリー8の体外診断医療装置は2023年7月21日 ・カテゴリー9の産業用監視制御機器は2024年7月21日 |
Commission Delegated Directive (EU) 2018/738 |
34 サーメットベースのトリマー電位差計の構成部品中の鉛 |
すべてのカテゴリーに適用、除外期限は以下 ・カテゴリー1-7および10は2021年7月21日 ・体外診断装置および産業用監視制御機器以外のカテゴリー8と9は2021年7月21日 ・カテゴリー8の体外診断医療装置は2023年7月21日 ・カテゴリー9の産業用監視制御機器およびカテゴリー11は2024年7月21日 |
Commission Delegated Directive (EU) 2018/739 |
6(a) 機械加工用途の鋼材および亜鉛めっき鋼中に合金元素として含まれる0.35wt%までの鉛 |
除外期限は以下 ・体外診断装置および産業用監視制御機器以外のカテゴリー8と9は2021年7月21日 ・カテゴリー8の体外診断医療装置は2023年7月21日 ・カテゴリー9の産業用監視制御機器およびカテゴリー11は2024年7月21日 |
6(a)- I 機械加工用途の鋼材中の合金元素として含まれる0.35wt%までの鉛と溶融亜鉛めっき鋼中に含まれる0.2wt%までの鉛 |
カテゴリー1-7および10に対し除外期限 2021年7月21日 |
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Commission Delegated Directive (EU) 2018/740 |
6(b) アルミニウム中に合金元素として含まれる0.4wt%までの鉛 |
除外期限は以下 ・体外診断装置および産業用監視制御機器以外のカテゴリー8と9は2021年7月21日 ・カテゴリー8の体外診断医療装置は2023年7月21日 ・カテゴリー9の産業用監視制御機器およびカテゴリー11は2024年7月21日 |
6(b)- I 鉛含有アルミニウムスクラップのリサイクルに由来するアルミニウムに合金元素として含まれる0.4wt%までの鉛 |
カテゴリー1-7および10に対し除外期限 2021年7月21日 |
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6(b)- II 機械加工用のアルミニウム中の合金元素として含まれる0.4wt%までの鉛 |
カテゴリー1-7および10に対し除外期限 2021年5月18日 |
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Commission Delegated Directive (EU) 2018/741 |
6(c) 銅合金中の4wt%までの鉛 |
除外期限は以下 ・カテゴリー1-7および10は2021年7月21日 ・体外診断装置および産業用監視制御機器以外のカテゴリー8と9は2021年7月21日 ・カテゴリー8の体外診断医療装置は2023年7月21日 ・カテゴリー9の産業用監視制御機器およびカテゴリー11は2024年7月21日 |
Commission Delegated Directive (EU) 2018/742 |
7(a) 高溶融温度タイプはんだ中の鉛(すなわち、85wt%超を含有している鉛ベース合金) |
・カテゴリー8の体外診断医療装置は2023年7月21日 カテゴリー9の産業用監視制御機器およびカテゴリー11は2024年7月21日 |
上表中の6(a)- IIの溶融亜鉛めっき鋼中に含まれる鉛が0.2wt%となったことについて、最終報告書18.6 Recommendation欄に以下の記載があります。
「溶融亜鉛めっき鋼の除外については、鉛は大部分が亜鉛めっき槽中の非意図的な不純物であるのでより低い閾値での提案が関連する申請者間で合意され、見直しの最長有効期間5年が提案されている。」
(瀧山 森雄)
1)https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=OJ:L:2018:123:TOC
2)http://rohs.exemptions.oeko.info/fileadmin/user_upload/RoHS_Pack_9/RoHS-Pack_9_Part_LAMPS_06-2016.pdf
http://rohs.exemptions.oeko.info/fileadmin/user_upload/RoHS_Pack_9/RoHS-Pack_9_Part_SOLDERS_06-2016.pdf
http://rohs.exemptions.oeko.info/fileadmin/user_upload/RoHS_Pack_9/RoHS-Pack_9_Part_ALLOYS-MISC_06-2016.pdf