電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2018.10.26
ここが知りたいREACH規則のコラム(2018年8月31日付)で、REACH規則の2次レビューを取りあげましたが、EU法規制では、期限を定めて見直しを実施するよう欧州委員会(EC)に義務付けていることが多くあります。
RoHS指令では、ECに対して次のような見直しを実施するよう義務付けています。
2014年7月22日が見直し期限として定められていた「適用範囲」については、すでに見直しが実施され、「適用範囲」については、2017年11月にRoHS指令第2条~第5条の一部が改正されました。
「制限対象物質」については、2015年6月の附属書IIの改正によって4種のフタル酸エステル類が追加され、2019年7月から含有が制限される予定となっています。また、三酸化二アンチモンなど7物質群を対象に次なる制限対象物質の検討(パック15)が始まっています。パック15の概要については、本コラム(2018年4月27日)を参照ください。
今回は、2021年7月22日が見直し期限となっている「指令全体の見直し」に関する活動が開始されたため、その概要について紹介します。
ECはRoHS指令全体の見直しに向けた活動を開始し、9月に見直しに向けたロードマップを公表1)し、意見募集が行われました。ロードマップとは、新規法規制の制定や既存法規制の見直しなどを行う場合に、目的や課題、見直しの観点などを示したものです。
公表されたRoHS指令全体の見直しに関するロードマップでは、RoHS指令の目的である「廃電気・電子機器の適切な回収や処理による健康および環境の保護」の達成状況を評価するととともに、合わせて法規制の簡素化や改善の可能性についても検討される予定です。
主な見直しの観点としては、次の項目があげられています。
このロードマップに対して10月12日まで意見募集が行われ、見直しの観点に関してEUおよび日本の20の業界団体などから意見2)が寄せられています。その中でも多く寄せられている意見としては次のような内容があげられます。
RoHS指令全体の見直しは始まった段階であり、これから各種の評価や検討が実施されることになります。今後の予定としては、2019年春頃に評価・検討内容に関する意見募集、2019年第4四半期に意見募集結果を踏まえた結論や政策オプションの利害関係者との意見交換会などを実施したうえで、2020年第4四半期に報告書が公表される予定となっています。
現在、EUが推進している「循環型経済(Circular Economy)活動計画」において、資源循環を推進するためには、製品、化学物質、廃棄物に関わる各法規制の連携が必要であるとされています。すでに認可対象候補物質リストに収載された物質(CL物質)の追跡管理に向けた廃棄物枠組み指令の改正による成形品中のCL物質の届出義務の新設など、一部連携の動きが出てきています。このような中、RoHS指令がどのように見直されるか、今後の検討内容が注目されるところです。
なお、冒頭で制限対象物質等の見直し(パック15)が現在進行中であることに触れましたが、10月に新たに「パック16」3)として、附属書IVに収載されている適用除外用途で2019年6月30日が有効期限となっているNo.42「高周波モード(50MHz超)で運転可能な血管内超音波画像処理システムで用いられる電気回転コネクタ中の水銀」の見直しと、新たな適用除外用途として「民生用爆発物の電気・電子起爆装置中の鉛および六価クロム化合物」の2種の適用除外用途に関する検討が開始されています。
(井上 晋一)
引用情報
1)RoHS指令の見直しに関するロードマップ
2)ロードマップに対する業界団体からの意見
3)パック16の開始