電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
RoHS指令の前文第9項には「本指定は、安全と健康の要求事項に関するEU法令と特定のEU廃棄物管理法令、特に特定の危険物質を含有する電池および蓄電池に関する法令を侵すことなく適用されるべきである」と明記されています。また、その電池に関する法令である2006年9月に発効した改定電池指令(2006/66/EC)では、前文第29項に「電池はRoHS指令の対象とはならない」と明記されています。しかし、ここでの電池および蓄電池は化学エネルギーにより電力を蓄える化学電池と定義しています。
したがって、太陽電池は、光エネルギーを直接電力に変換する物理電池ですので、電池指令に定義される電池には該当しないことになります。
一方RoHS指令の「電気・電子機器」は、「電気・電子機器とは、正しく作動するために電流または電磁界に依存する機器であって、WEEE指令の附属書I Aに定めるカテゴリーに属するもの。さらに交流1,000V、直流1,500Vを超えない定格電圧で使用するように設計され、そのような電流と電磁界を発生、伝導、測定するための機器を意味する」と定義されています。
したがって、製品がRoHS指令の適用対象となるかの判断ポイントは、次のように考えます。
太陽電池は、電源や稼動部を有しておらず、電気を動力源としていませんので、RoHS指令対象の製品には該当しません。
ただし、WEEE指令13条の「科学および技術の進歩への適応」では、太陽電池を、対象製品へ追加の修正を検討する条文がありました。しかし、2008年12月に公開されたWEEE指令の改訂提案では、この条項が削除されています(第17条)。また、改訂RoHS指令案では、拘束的なリスト、すなわち、リストに掲載されていなければ、適用されないことになるとされています。改訂案では太陽電池はリストされていません。
カドミウムを利用したCdTe系薄膜を用いた太陽電池は、2枚のガラスに太陽電池を挟み込んだ形態のモジュールが代表的です。用いるCdが少量でしかも安定した化合物がモジュールに閉じ込められているため、環境負荷の低い太陽電池と知られています。kW・h当たりのCd使用量はNiCd電池よりも相当に少量のようです。性能がよくかつ安価であるため、実用化が始まっていると思われます。なお、Cdを使用しているため製品のリサイクルを前提に販売をしている企業もあるようです。
1988年には、カドミウムの使用削減の欧州理事会決議が出されています。この決議では、カドミウムの使用は代替物がない時に限り、使用する場合は可能な限りリサイクルすることを明記しています。
一般に多種多様な材料や構成部品が使われており中には有害なものもあることを背景に、電気・電子廃棄物(WEEE)の発生を予防し、廃棄物の処分量削減のために廃棄物の再使用、リサイクルおよびその他の形態の再利用を促進することを目的としてWEEE指令、RoHS指令が設けられました。
CdTe系太陽電池も実用化が進み大量の機器が普及すると、電気・電子機器と同様な人の健康や環境にリスクを回避するための措置がとられることは考え得ます。法制化については把握しておりませんが、予防原則に則って、電池指令、RoHS指令などと同じように、新たな環境政策として今後検討される可能性は捨て切れないかと思います。