電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
ポリ塩化ビニル(以降、PVC)の規制を考えるにあたり、まずは(1)PVC自体の問題と(2)PVCに使用されている可塑剤の問題を説明したうえで、PVCが規制の対象になるのか考えることにします。
(1)PVC自体の問題は、PVCを焼却する際にダイオキシンや塩素ガスなどの有害ガスが発生し、環境に影響が及ぶことを問題にするものです。また、(2)PVCの可塑剤の問題は、PVCに使用される可塑剤(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジブチル(DBP))には生殖毒性があり、PVCから可塑剤が侵出したときに生物の生殖機能に影響が及ぶことを問題にするものです。これらの問題を踏まえて、EUではPVCやフタル酸エステル類の規制が検討されてきました1)、2)、3)。
このような状況の中で、2008年12月に出されたEU欧州委員会のRoHS改正案に対して、2009年12月に出されたEU議会環境委員会のラポーターからの修正草案には制限物質として、PVC自体並びにこれらのフタル酸エステル類が収載されました。
2010年6月2日にEU議会の環境委員会で、このラポーターの修正妥協案の投票が行われました。その結果、PVCやフタル酸エステル類は、優先評価物質として、今後も継続して評価されることになっています(詳細は、2010年6月11日付けコラムをご参照ください)。
したがって、将来、ご指摘の情報技術機器へのPVCはEUでは、規制対象質となる可能性がありますが、現時点ではまだ規制時期等は確定していません。
なお、わが国のPVC製乳幼児用おもちゃへの可塑剤(DEHP)の使用禁止(食品衛生法に基づく)や、米国の「化学物質に敏感な小児の保護」のためのTSCA規定強化に向けた取組み(「化学物質管理法改革の基本原則」に基づく)等があります。これらを踏まえますと、国内、アメリカ、中国でもEUと同様に情報技術機器の出荷にあたり、可塑剤を含むPVCの使用について規制が課された法令案が提示される可能性はあり、その動向に注意することが重要です。
1)http://eur-lex.europa.eu/smartapi/cgi/sga_doc?smartapi!celexplus!prod!DocNumber&lg=en&type_doc=COMfinal&an_doc=2000&nu_doc=469
2)http://www.europarl.europa.eu/omk/omnsapir.so/pv2?PRG=CALDOC&FILE=010403&LANGUE=EN&TPV=PROV&SDOCTA=8&TXTLST=1&Type_Doc=FIRST&POS=1
3)http://ec.europa.eu/food/food/chemicalsafety/foodcontact/leg_files/90_128_en.pdf