電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
RoHS指令では「意図的な含有(意図的な添加)」と「不純物」を区別せず、附属書IIで定められた最大許容濃度以下または超過しているかが判断基準となっています。つまりRoHS指令では、意図的な添加または不純物のいずれであっても、最大許容濃度以下にすることを求めていることになります。
このようにRoHS指令では意図的な添加や不純物は定義されていませんが、サプライチェーンの情報伝達で利用されているアーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)の「AIS・MSDSPlus解説書(第3.1版)」では、それぞれ次のように定義されています。
不純物:製品機能上、特定の役割が与えられておらず、なおかつ製品中のCAS番号(あるいはその他の識別番号)で特定された化学物質とは別のCAS番号(あるいはその他の識別番号)を有する物質とする
意図的添加:対象物に一定の性能を持たせるために添加された状態をいう
ご質問にある通常のリン青銅(C5191、C5210など)や真鍮(C2680、C2801など)に含まれる微量な鉛やカドミウムは、同物質に製品機能上の役割が与えられているわけではないため、不純物であると考えます。
ただし、快削黄銅棒(C3604など)では、快削性を高めるために鉛を1.8~3.7%含有しており、この場合は鉛が製品の機能に寄与していることから、意図的な添加であるといえます。
なお、「銅及び銅合金の棒」に関するJIS H3250は2010年に改訂され、鉛レス・カドミウムレス快削黄銅棒(C6801やC6802など)及び耐脱亜鉛黄銅棒(C3531)が新たに規格化されました。
ただし、REACH規則への対応など、閾値が設定されていない化学物質の情報伝達が求められるようになり、JAMPでは管理対象物質の報告にあたり次のような基準が示されています1)。
このように、RoHS指令では意図的な添加と不純物の区別は求められておりませんが、JAMP等の業界団体では、サプライチェーンにおける情報伝達では意図的な添加は開示を必須とし、不純物であっても何らかの情報で知り得た既知の情報であれば情報開示することを推奨しています。