電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2009年5月15日に香港で採択されたシップリサイクル条約<1)、2)は、主に以下の点を義務付けるものです。
対象船舶は、国際航海する国際総トン数が500トン以上の商用船です。
シップリサイクル条約は以下の発効要件達成から24カ月後に発効の見込みです。
現在のところは発効要件の2項目目を達成できていませんので、発効は早くても2017年以降になると思われます。 批准国がこの条約の実施を支援するため、以下のガイドラインの整備が2012年10月に完了し、公開されています。
一方2013年12月30日に発効したEUシップリサイクル規則3)は、シップリサイクル条約の内容に準拠しているものの、条約の発効を待たずに適用になる可能性があります。 同規則は、2015年12月31日以降で、EUリスト掲載施設の解撤能力が250万LDTを超えた日から6カ月後、もしくは2018年12月31日のいずれか早い日から適用されます。
シップリサイクル条約に対してEUシップリサイクル規則で追加されている主な項目は以下の通りです。
項目 | EUシップリサイクル規則での追加項目 | |
---|---|---|
(1) | 適用船舶 | EU籍船およびEU加盟国に寄港する非EU籍船 |
(2) | 有害物質の搭載禁止 | ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)を追加 |
(3) | インベントリ(IHM)の備え置き | 臭素系難燃剤HBCDDを追加 |
(4) | 船主に対する義務 | EU籍船には、同規則により承認された船舶リサイクル施設のリストに掲載された船舶リサイクル施設で船舶解撤 |
(5) | 非EU船籍に対する義務 | EU加盟国に寄港する場合、非EU籍船についてもIHMの備え置きおよび更新、およびEU加盟国に寄港する際にPSC検査への対応が必要 |
(6) | 船舶リサイクル施設の要件 | ・船舶リサイクル施設要件 特に潮間帯においていかなる物質の排出・流出も管理できることを証明。 有効な排水システムを備えた非浸透性の床の上でのみ有害物質・廃棄物を扱う。 ・最終処分施設要件 EU域内法改正法案と同等の基準に従って最終処分がされていることを船舶リサイクル施設が証明 |
(7) | EUリストの発行 | シップリサイクル条約に加えた上記(6)項に示す船舶リサイクル施設の要件を満たす船舶リサイクル施設のリスト(EUリスト)を作成し、2016年12月31日までに当該リストをEU官報に掲載するとともにECのウェブサイトで公表 |
次に、最近のシップリサイクル条約に関する動向ですが、2014年5月19日に、この条約に当初強く反対していたコンゴ共和国が参加を表明したことで大きく前進し、2014年7月2日にフランスが批准しています。
他のEU諸国についても今後批准が進むものと想定されています。また、船舶産業の盛んなトルコや中国も批准のための準備が進んでおり、日本も同様に批准に向けて準備を行っています。
なお、発効の条件である3項目のうち、2項目目については世界の50.1%を占める上位5カ国(パナマ、マーシャル諸島、シンガポール、バハマ、リベリア)のうち2カ国程度のサポートがなければ達成は難しいと考えられています。
従いまして、シップリサイクル条約の発効については各国の批准動向を注視する必要があります。ただし、EUシップリサイクル規則へ対応できていれば、シップリサイクル条約が発効されても大きな影響はないものと考えられます。
1)
http://www.mlit.go.jp/maritime/senpaku/Ship_recycling/jyouyaku_honbun.pdf
2)
http://www.mlit.go.jp/maritime/senpaku/Ship_recycling/jyouyaku_fuzoku.pdf
3)
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32013R1257&rid=1
/well/rohs/column/090821.html