電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
RoHS指令では含有規制物質の含有濃度を測定する際の分母は「均質材料」(全体的に均一な組成の材料、または機械的な手段で他の材料に解体・分離ができない材料、材料の組合せ)とされており、ご質問のICはプラスチック成型品、リードフレーム材、ボンディングワイヤ、端子、ピン、はんだなど複数の均質材料ごとに規制を受けます。
現状で指令対応が不明だということですと、ICをこれら均質材料に機械的に分離したのちに物質含有量を測定することになります。
測定方法は、まず蛍光X線分析によるスクリーニング分析(定性分析)を行い、測定濃度値のばらつきを加味したグレーゾーンであるものには精密分析(定量分析)を行うという2段階方式がIEC62321において基本とされています。
本規格では、グレーゾーンを決めるための物質ごとのスクリーニング許容値、精密分析時の分析方法なども定められています。RoHS指令で要求される技術文書の作成にはIEC62321による分析試験が必要であるとされていますので、本規格による分析と判断が適切です。
しかし、現実的には蛍光X線分析では表面の分析しかできないという限界もあり、自社対応は困難となり、専門の分析会社に依頼することが多くなるのではないかと考えます。
また、在庫品のロット違いも考慮に入れる必要があり相当な負担が生じます。
そこで、(1)ICメーカーへ問い合わせる、(2)メーカーが現存しない場合はJEITA(日本メーカーの場合)、(一社)日本半導体商社協会(海外メーカーの場合)などへ相談し、可能な手段を尽くして適合性確認をして記録を残しておき、その過程を確証データと考えることもできます。
確認・分析の結果が許容濃度以上であった場合には、当該ICはRoHS指令適用用途では基本的には使用できません。例外的に使用できる場合は以下の通りです。
もし、貴社が過去に出荷をされたもののアフター等の対応でご検討中なら、上記の結果に係わらず1のケースが該当する可能性があります。
1.以下の物の修理、再使用、機能更新または能力向上のための予備部品(第4条4)
2.「設計変更による除去・代替、規制物質を必要としない材料・部品が科学的または技術的に実行不可能である」「代替品の信頼性が確実でない」「代替品に起因する環境・健康・消費者安全の総合的なマイナスの影響が、その総合的な便益を上回りそうな場合」で、付属書Vによる申請が行われ、除外用途として認められた場合(第5条)
いずれの場合も慎重な対応が必要であると考えます。