電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
非鉄金属(non-ferrous metal)とは、鉄および鉄を主成分とした合金、つまり鋼(ferrous metal)以外の金属のすべてを指し、日本工業規格(JIS)では、部門記号H(非鉄金属)に区分されています。非鉄金属は以下のように分類できます。
お問い合わせの貴社の非鉄金属製品の製造工程において、アルミの場合において制限対象物質の意図的添加と含有について考えてみます。
アルミの鋳造品を製造する場合、鋳造温度は720~750℃です。
一方、PBDEのDeca-BDEの分解温度は362℃です。
PBDEは難燃剤ですので金属材料には添加しませんが、リスクとして考えられるのは汚染があることです。しかし、たとえ汚染によりインゴットにDeca-BDEが混入したとしても、アルミの鋳造温度よりDeca-BDEの分解温度が低いため、アルミの鋳造段階でDeca-BDEは分解して存在しなくなります。
また、DEHPについても、自然発火温度は350℃ですので、PBDE同様アルミの鋳造温度より低いため、アルミの鋳造段階では存在しなくなります。
ご参考までに、非鉄金属及び制限対象物質の融解温度または発火温度について記しておきます。
名称 | 元素記号 | 融点 |
---|---|---|
金 | Au | 1064.4℃ |
白金 | Pt | 1770℃ |
バリウム | Ba | 725℃ |
銀 | Ag | 961.93℃ |
銅 | Cu | 1083・4℃ |
アルミニウム | Al | 660.4℃ |
名称 | 元素記号 | 融点 | 発火点 |
---|---|---|---|
鉛 | Pb | 327.5℃ | |
カドミウム | Cd | 320.9℃ | |
水銀 | Hg | -38.842℃ | |
六価クロム | - | 197~500℃ | |
PBB | - | 72℃ | |
PBDE | - | 305℃ | |
DEHP | - | - | 350℃ |
BBP | - | - | 425℃ |
DBP | - | - | 402℃ |
DIBP | - | - | 400℃ |
上記から、非鉄金属の融点よりも制限対象物質の融点又は発火点のほうが低いことがわかります。従いまして、非鉄金属を鋳造する過程で有機物は含有しないことになりますので、新たに追加された4物質についても上記の考え方を参考にご確認いただき、該当する非鉄金属の鋳造温度よりも制限対象物質の分解温度が低いなど同様の根拠に基づき、その根拠に当てはまる場合においては非含有と考えてもよろしいかと思います。
ただし、表面処理(塗装、鍍金等)を行う場合は有機物が存在しますので、注意が必要です。
2016年1月29日付けコラムでは、「RoHS(II)指令が求める順法確証の考え方」についても記載していますのでご参考ください。