電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
蛍光X線分析により検出されたクロムがRoHS(II)指令で規制される六価クロムを含有しているかどうか判断するには、六価クロムの定性分析が有効な方法です。六価クロムの定性分析の方法としては、ジフェニルカルバジド溶液を用いたスポットテスト法または沸騰水抽出法があり、これらの方法は、国際規格であるICE62321附属書Bに「金属試料無色および着色防食皮膜中の六価クロム確認試験」として規定があります。
・スポットテスト法
ジフェニルカルバジド溶液を分析したい試料の表面に滴下し、呈色した場合は、六価クロムが存在すると判断する。
※判断が困難な場合、標準液である濃度1mg/kgの二クロム酸カリウム(六価クロム)水溶液と着色の度合いを比較する。
・沸騰水法
規定された表面積をもつ試料に対し、規定量の沸騰水で抽出した抽出液へジフェニルカルバジド溶液を滴下し、着色をみる。赤く着色した場合、六価クロムが存在すると判断する。
※判断が困難な場合、抽出液の吸光度(540nm)を標準液である濃度0.02mg/kgの二クロム酸カリウム(六価クロム)水溶液のものと比較する。
また、蛍光X線分析によりアルミダイキャストから元素としてクロムが検出されるケースとしては、以下のようなことが考えられます。
(1)アルミニウム合金地金にクロムが含有するケース
JIS H 5302によると、アルミニウム合金ダイカストは、性質や特徴に応じた14種類の分類があり、このうち機械的性質に優れると記載されているAlSi9Cu3(Fe)など4種類については、アルミニウム合金ダイカスト中の添加物として、クロムが含まれます。
また、アルミスクラップなどのリサイクル合金を原材料としている場合、リサイクル原材料中にクロメート処理皮膜が存在していることによりクロムが含まれる可能性があります。
ただし、仮に六価クロムがアルミニウム地金に含まれていた場合でも、六価クロムに対し還元作用があると考えられるアルミニウム存在下で溶融する製造過程においては、六価クロムは還元され、RoHSの規制値以下になるとするのが妥当と考えられます。
(2)アルミダイキャストの表面処理にクロムが含有するケース
防食性を高めるなどの目的で、アルミダイキャストの下地処理などとしてクロムを含有したクロメート処理を施すケースがあります。クロメート処理は、近年の法規制や環境への配慮により、三価クロム由来のものへ置き換えが進んでいます。ただし、六価クロム由来のものが使用されている場合もありますので、特にクロメート処理へ六価クロム由来のものが使用されていると判明した場合は、注意が必要です。サプライヤーなどから信頼できるデータが得られない場合、先に挙げた定性分析法などにより六価クロムの有無について確認が必要と考えます。
アルミダイキャスト中の六価クロムの有無については、先に示した定性分析による判断が有効といえます。また、(1)、(2)でみてきた通り、どのような過程を経たアルミニウム地金を使用し、どのような成分で構成されるアルミニウム合金ダイカストで、そこにどのような表面処理をされた結果クロムが含有したのかを調べ、それを元に適切なデータを取得することなどからも判断できる可能性があります。